おく松さんちの「みやざき地鶏頭(じとっこ)

- Miyazaki-city, Miyazaki

歯応えも、旨みも充分、おく松さんちの地どり

古くから、鶏肉のおいしさには定評がある宮崎県。チキン南蛮や炭火焼など、郷土料理として親しまれている鶏料理も数多い。それだけ、鶏肉そのものがおいしいということでもある。地鶏の銘柄は数あれど、県が今最も力を入れているのが「みやざき地鶏頭」だ。
地鶏頭(じとっこ)とは、珍しい名前だが、宮崎県や鹿児島県で古くから飼育されてきた日本在来種で、現在は天然記念物に指定されている鶏。これを原種鶏とし、宮崎県畜産試験場で、プリマスロックや九州ロードという肉質の優秀な鶏を交配することで確立した、宮崎県固有の鶏、それが「みやざき地鶏頭」。もも肉は味わいが濃く、しっかりと噛みごたえがあり、胸肉は柔らかく、あっさりと品がいい。
栗原友さんが、友人が営むレストランで地鶏の炭火焼を食べ、パリパリに焼けた皮の下から肉汁がほとばしり出るのに驚いたのは、今年の夏のこと。そのおいしさが忘れられず、改めて今回訊ねてみれば、それこそがなんと「みやざき地鶏頭」。生産者である奥松成安さんを紹介してもらい、さっそく生産の現場を訪ねることにした。

ユニークな生産システムが生む、おいしい地鶏

奥松成安さんは、養鶏家としては、実は、まだまだ新人。2008年に、「みやざき地鶏頭」の生産者の募集に応募し、申請が受理されたのち、養鶏を始めた。宮崎県では、平米あたりの飼育羽数など、厳しい条件を設け、その規定をクリアしたものだけに生産を許可するという仕組みを作り、「みやざき地鶏頭」のブランド化を進めている。晴れて生産を許されても、販路は自分で探さなければならないというのも規則だ。20歳のころに養鶏を志し、いつかまた、と、心に秘めていた奥松さんだが、行きつけの焼き鳥屋さんのご主人に、「鶏作ったら買ってあげるよ」と言われ、夢が再燃。サラリーマンとの二足にわらじを履くにいたった。

ゆったりとした平飼いが生む極上の肉質

宮崎県下といっても、鹿児島空港のほうが便がいいえびの市に、奥松さんの養鶏場はある。
畑に囲まれたのどかな地に建つ鶏舎の庭では、茶色、白、ぶち、大きいの、小さいのと、さまざまな鶏(見かけは異なるが、これが不思議なことに、みんな「みやざき地鶏頭」!)たちが、せわしなく走りまわっている。
ブロイラーに対する地鶏の定義のひとつは、"平飼い"。つまり、自分の足で地面を歩き回って十分に運動をするということ。それによって生まれる、締まった肉質こそが地鶏の意義だが、「みやざき地鶏頭」は、何よりその点に力を入れている。飼育にあたっては、平米あたり2羽以下。鶏舎の面積に応じて飼育可能羽数が決められる。時折、県の職員が抜き打ちで検査にくるという厳しさだが、これも安心の証だ。「JAの基準で地鶏を名乗るには、平米あたり10羽が基準なんです。それと比べると、いかに「みやざき地鶏頭」が運動量を重視しているかが、わかるでしょう」との説明にトモさんも頷く。

時間をかけてじっくり飼育

地鶏とブロイラーを分けるもうひとつのポイントは、育成期間だ。ブロイラーの場合は最速3週間で出荷されるが、「みやざき地鶏頭」では雌4ケ月、雄5ケ月、きっちり育ててからの出荷が決まりだ。JAの地鶏の規定でも最低が2か月だから、この点からも、大変に時間をかけ、丁寧に育てていることがわかる。生育期間が長いということは、それだけ、肉の中のアミノ酸が増え、味が濃くなるということだ。「これが出荷直前の鶏ですよ」と、奥松さんが教えてくれた鶏をみて「うわ、背が高い!足も長~い」と、驚くトモさん。「そのたくましい足で元気に駆け回っているからこそのおいしさなんですね」。

ひなは県から購入するもの

雌雄一緒のスペースで平飼いで育てているので、当然卵も産まれる。自然のままの環境だから、もちろん有精卵。かえせばひよこになるわけだが、ぜったいに孵化させてはいけないのだという。それが「みやざき地鶏頭」という種を徹底して守るための策だ。つまり、クローンならぬ、「みやざき地鶏頭」もどきができるのを防ぐため。だから、卵を売ることも厳禁。「卵、もったいないみたいですけれど……。ひとつの品種を確立し、育てていくということは、それほど大変なことなんですね」とトモさん。
だから、養鶏といっても、奥松さんには孵化の業務はない。毎月県の試験場が生産する、純血の「みやざき地鶏頭」のひな630羽を購入。ひなたちは、鶏舎の床下に作られたスペースで、24時間白熱燈つけ、毛布でおおって保温した中で1か月間を過ごす。毛布をはずして見せてもらうと、明るさや気温の急な変化に驚いたのか、バタバタと逃げまどうようすが見える。「ふわふわした産毛が可愛い!」と、愛しそうに見つめるトモさん。1か月を過ぎるとすぐに鶏舎の中で健康的な平飼いが始まる。つまり,子供のときからずーっと平飼い。数ある地鶏の中でも、ここまでの基準をクリアしている鶏は少ない。おいしいのも当然の帰結だ。

栄養バランスにこだわった餌を

肉の味を決めるのは餌。これは、牛にしろ鶏にしろ、魚にしろ同じこと。だから、餌に関しても細かな決まりがある。県が指定している飼料はとうもろこしなどの穀類65%、植物性の油かす類19%……、などとバランスよく配合されている。これを与えることによって、「みやざき地鶏頭」としての肉の味が安定する。同時に、奥松さんのところでは規定の餌のほかに、新鮮な野菜も細かく刻んで与えている。今日は、形が不揃いで農家が出荷できなかったゴーヤだ。新鮮なビタミンを摂取することで、腸が活性化されて、肉の状態もよくなるのだ。

骨まで切れる鋭利な小型の包丁で、まず足の関節に切り込みを入れる。

両足を持って、外側にねじりながら、関節をはずす。

続いて、手羽の関節に切り込みを入れ、手羽もはずし、胸肉と手羽先に分ける。

首ヅルを残したまま背中側から肋骨に切り目を入れて内臓をはずす。

手前左から、もも肉、胸肉、ささみ、奥が手羽先と整然と並ぶ。

そしていよいよ精肉に

こうして手塩にかけて4~5か月、鶏たちは、おいしい肉へと姿を変える。
精肉への加工は、鶏舎の隣の建物で行われる。まずは逆円錐型の台に逆さにして鶏を入れると、首だけが、外へ出るかっこうとなるので、すぐに首をはね、血抜き。そのあと63℃の湯につけて回転する脱毛機の中に入れて羽をはずす。とここまでは、設備機器を見ながらの奥松さんの解説。その上で、解体を実演してみせてくれた。ものの5分で、もも肉、胸肉、手羽先、ガラ、内臓類と分解される。「パチパチパチ、わーお見事!」とトモさんも目を丸くする。「さばき方も県からの指導ですか?」の問いに、「いやいや、行きつけの焼き鳥屋さんの指導ですよ」と笑う奥松さん。この手早さも、鮮度を保つ秘訣だ。

いざ、生肉を刺身で試食

「さ、胸肉の刺身です。まずは食べてみてください!」の奥松さんの言葉に、「いただきまーす」よりも前に手が出るトモさん。だって、目の前でさばいた鶏をその場で口にできる機会なんてめったにない。つるりと喉をすべる官能的な食感、そして口に広がる優しい甘さ。「もも肉はね、またちょっと違いますよ」とやや濃い色をした肉を皿へ並べる。こちらは、キュッ、キュッとした歯ごたえとともに、濃厚な旨みがあふれ、思わずごっくんと喉がなる。さらに、禁断とされる卵も賞味させてもらった。ぷるんとした白身の弾力が元気の証。甘口の醤油をつけたもも肉を卵にくぐらせると、「うーん最高!」
それにしても、奥松さんの鶏は、鶏にありがちなくさみがまったくない。鮮度がよいことはもちろんだが、皮下脂肪である鳥脂が黄色ではなく、極上の白色であることが理由。動物の脂は、ストレスを感じると黄色くなり、匂いも強くなるのだそうだ。劣化が早い鶏肉の刺身は、都会ではなかなか難しいと思いきや、「さばいてすぐに、航空便のクール便で出しますから、到着の翌日まで、どの部位も生でOKですよ」の答えに、トモさんも大喜び。さっそく、あれも、これも作ってみたいと、頭の中はレシピの組み立てでいっぱいになる。

今回、トモさんが取り寄せたのは、鶏1羽分と内臓。それぞれの部位が個別にパックされている。
渾身のレシピに乞ご期待!

ささみ

レバー・砂肝・ハツ

胸肉

ガラ

From Producer
奥松成安さん

きちんと手をかけて育てると、きちんと成果が出る。命あるものを育てるのは、大変だけれど、やりがいがある仕事です。「みやざき地鶏頭」の生産者としては後発で、必然的に、県外への出荷が多くなりましたが、逆にそれで東京の飲食店とつながることができました。生産者と消費者がダイレクトにつながることへの需要は、今後ますますふえるんじゃないでしょうか。今後は、、小規模生産だからこそできる、こまわりのきく、販売を目指します。

Profile
奥松成安(おくまつ・なるやす)●卒業後、サラリーマン生活をしながら47歳で「みやざき地頭鶏」の飼育開始。現在、東京の焼き鳥店「宮崎地どり家・汐ぼん等」フランス料理店「アンカシェット南青山」などに定期的に出荷。今後はサラリーマンを辞し、養鶏に専念する予定。自ら産した鶏を使って、東京にこだわりの焼き鳥屋を開きたいと、夢をふくらませる。

Tomo's Comment
「鶏たちが、自由気ままに駆けまわる姿が印象的でした。十分な運動と、ストレスのない暮らし。これこそが、肉のおいしさの秘密だなって。鶏1羽をおろす手早さにも感激でした。そしてさばき立てをクール便で送ってもらえるというのだからすごい。レバー、ハツ、砂肝のほか、腸やきんかんなど、普段食べられない部位もOKとは、わたしたち消費者にとってはほんとにうれしいこと!今から料理をするのが楽しみです」

おく松さんちの地どり

宮崎県えびの市大字大河平1210

tel & fax 0984-23-7122

jidori-farm.com


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