九州工業大学記念講堂 / 清家 清

- Memorial Hall, Kyusyu Institute of Technology

人間らしく、日本らしく。
軽やかで伸びやかな清家らしさ溢れる講堂。

客席はもともとのこの地の傾斜を生かし、コストを抑えて作られている。ステンドグラスを通す光が柔らかく、優しい。すりガラスの上に膠(にかわ)を流して剥ぎ取る手法のデザインガラスが使われている。

訪れたのが土曜日ということもあってか、九州工業大学のキャンパスは人影がまばらで静けさに包まれていた。正門を入ってすぐに我々を優しく迎えてくれたのが、清家清の『九州工業大学記念講堂』だ。コンクリートの扇子を広げたような屋根の形が印象的な建物だ。

「講堂」の入口は中央の軸線上よりわずかに手前に位置している。
中村拓志「建物の中央に入口を作らなかったのは、正門から記念講堂をアプローチした際の、人間の目線を意識したからでしょう。そのヒューマンコンシャスな設計に共感を覚えました。また、傾斜地に合わせて「講堂」内の客席を作っているのもいいですね。そのほうが建築コストも下るし、その "地" に根ざした建築となります」

コンクリートの素材感そのままなのに軽やかな印象なのは、扇子のような形の屋根が薄く華奢に見えるせいだろうか、それともどこか障子を思わせる格子模様の壁面になっているからだろうか。
中村「清家さんは、正方形モジュールを駆使し、合理的にパネルを組み合わせる手法を多く使っていますが、それでいてどこか人間味やあたたかさを感じる作品を残しています。『九州工業大学記念講堂』は折板構造を採用していますが、清家さんが住宅建築で得意としている方法論を、大きな公共建築にも生かしているのがとてもおもしろいですね」

「講堂」の軸線上には、道を挟んで煉瓦壁と緩い勾配の切妻屋根を持つ「事務棟」(現 鳳龍会館)が建つ。林の中で木漏れ日につつまれながら浮遊するように立っている。
中村「低い庇を持つ伸び伸びとした建物です。周囲の樹木の垂直のラインと、横に長いフォルムは、どこか日本的なものを感じさせます。また、煉瓦で壁を埋めていく手法などのバウハウス的な合理主義を、日本らしさを残しながら導入した、清家さんらしさがしっかり残っている公共建築だと思います」

右・「講堂」の入口の煉瓦の壁のデザインが、道路を挟んで、そのまま「事務棟」に続く。「事務棟」にも「講堂」と同じステンドガラスが使われている。ガラスの修復には大変な労力とコストをかけ、丁寧に行われた。

下・木立の中の「事務棟」。竣工当時より木が大きく生長し、その対比として「事務棟」がより軽やかに見えている。

レンガと切妻屋根の「事務棟」が、「講堂」の軸線上に位置している。土地は向かって左へ傾斜しており、講堂内部の客席はその傾斜を利用して段差が設けられている。

建物解説

九州工業大学記念講堂

1960年の作品。清家清は住宅作品が多い建築家ということもあり、見学のできる公共建築としてはここが代表作となる。「記念講堂」は、当時最新の技術であった折板構造(折り紙のように平面板を組み合わせて構造体を架構する構造)を、扇形の屋根と背部壁面に採用。正面の庇は8メートルの長さで玄関前を覆う。非常にシンプルな構成でローコストに抑えているにもかかわらずダイナミックな力強さ。清家清は、機能主義による都市住宅のプロトタイプを提案し、住宅をはじめとする明瞭で軽快な作品で日本の伝統的モダン美を独自の解釈ではじめて形にしている。ちなみに、博学で多彩な趣味の持ち主である清家清は、1976年のネスカフェゴールドブレンドのCMで”違いのわかる男”として建築家という職業を世に印象付けている。

九州工業大学記念講堂

戸畑キャンパス
福岡県北九州市戸畑区仙水町1番1号

 

www.kyutech.ac.jp


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