南種子食糧[蜜の入った安納芋]

- Tanegashima, Kagoshima

安納芋というさつまいもをご存知だろうか?ほっくりと蒸しあがった濃いオレンジ色の身を割れば、中からとろりと蜜が出てくるほどにしっとり甘く、別名、蜜芋とよばれる。原産地は種子島安納地区。
「初めて安納芋を食べたのは3年前のこと。蒸しただけでスイートポテトみたい!っとて驚きました。この数年でちょっとしたブームになっているけれど、種子島生まれの芋だと知ったのは最近のことです。」千葉に畑を借りて、時間があれば週末は農作業に励むという栗原友さん。安納芋の故郷にすっかり心惹かれている。今回の鹿児島取材で、なんとしても種子島まで足をのばしたいと、強行軍のスケジュールを組んだ。
「ますや」をあとにして、鹿児島空港からプロペラ機に乗って、一路、種子島へ。飛行場で南種子役場の河口恵一郎さんと対面。種子島とは、種のように細長い形をしていることからの名前。全長60kmと、思いの外大きい。空港と、畑のある南種子地区は真反対にあるため、迎えにきてくれたというわけだ。

安納芋のルーツを探る

種子島にさつまいもが伝わったのは1732年のことと記録に残されている。ひどい飢饉で苦しんていた島民をなんとか救いたいと、琉球には夢のような植物があるという話を聞いた島主が、王様に頼み込んで、琉球から送ってもらい、苗を植えたのが始まりと言われている。その芋は島民の飢饉を救ったばかりでなく、島の基幹作物としてすっかり根付いた。一方、太平洋戦争中に東南アジアに渡った安納地区出身の人が、終戦時にその地にあった芋を持って帰り、安納地区で栽培を始めた。これが安納芋のルーツ。だから、種子島産といっても、琉球経由の一般のさつまいもとは別、南方の芋なのである。
翌朝、秋晴れの空の下、南種子の中心部から車で20分、日髙保太朗さんの農場へ向かった。畑は見渡す限り芋、芋、芋。畑を訪れた10月末は収穫期の只中。納屋には、すでに収穫された安納芋が袋に詰めてうず高く積まれている。畑に出る前に、まず、収穫した安納芋の説明をしてくれた。

蜜が入る理由

「最初から蜜が入っているわけじゃないんですよ」という日高さんの言葉に「へー」と驚くトモさん。なにしろ安納芋といえば、蒸した芋を割ると、甘やかな蜜が流れてくるのが特徴だが、実はこの蜜、堀った時点では形成されていないのだ。掘って、1ヶ月から40日ほど冷暗所で貯蔵する間にでんぷんが蜜に変わるのだという。「ほら」と日髙さん。皮をちょっとカットして見せてくれる。白っぽいでんぷんが吹き出るのがわかる。これこそが、とろ~り蜜のもとなのだ。
だから、外皮を傷をつけてしまうと、そこから蜜が外へこぼれてしまう。ラフな芋にみえて、収穫時、貯蔵の間、そして輸送にも気を遣う、非常にデリケートで手のかかる芋なのである。そして意外に知られていないのが、冷蔵庫に入れてはいけないということ。保存には13℃くらいがベストだそうだ。冷蔵庫に入れるとかえって傷んでしまう。厳寒時も、新聞紙でくるむなど、冷えすぎない工夫を。「南国生まれだから、寒さには弱いんですねえ」と納得。

ブランド化の推進

しかしながら、生産者の中には、その手間や時間を惜しみ、40日を待たずに出荷してしまう不届きものもいるとか。そこで、南種子役場では、河口さんたちを中心にブランドづくりのために、採取してから出荷までの日数、出荷時点での糖度など、細かい規則を設けている。ちなみに、糖度10.7度以上が、安納芋として認められる基準。また、現在は鹿児島で栽培しても安納芋を名乗っているものもあるが、今後は、種子島で生産されたもののみが名乗れるという、フランスのAOCならぬ、原産地呼称制を厳しくし、さらなるブランド化をはかろうとしている。種子島の気候と土質の中で栽培されることで、初めて安納芋本来の味と食感になるのだから。
そんな難しい(?)話が一段落したあとに「どうやって食べるのが一番おいしいんですか?」のトモさんの質問に、日高さんも相好を崩す。「フォークで穴を開けてヘルシアでそのまま焼くのが一番ですよ」と。芯から熱が入るから、ほっこりと、自然の甘みも最高潮となる。もちろん、ヘルシアがない人はオーブンで焼けばいい。お持ちの方はぜひ、お試しを。それ以外にも蒸す、輪切りにしてフライパンでそのまま焼く、素揚げもOKと、さまざまに楽しめる芋なのだ。

わーい、芋掘りだ!

さて、畑へ。段差もバックもものともせずに、トラクターを運転する日高さんの姿に「カッコイイ~」とトモさん。居ても立ってもたまらず、納屋へ戻り、割烹着と軍手を借りて、出陣。土を触ればふかふかだ。丁寧に堆肥をすきこんだ、手をかけている畑であることがわかる。安納芋の収穫は10月から12月半ばまで続く。4月~6月に植えつけた蔓が、日髙さんの畑では、150トンもの安納芋として収穫されるのだ。
女性陣に鍬の入れ方を習って、つるの根本へ鍬を入れる。少し土をよけると、紫色の安納芋がいくつかつながって顔を出す。ころんと丸い形に、「うわ、さつまいもなのに、まん丸!」とトモさんが喜べば、「安納芋はそもそもは球形に近かったんです。ただ、それだと売れにくいので、現在は細長い安納芋を農家は一生懸命作ろうとしているんですよ」と日高さん。
「だめ、だめ、傷ついちゃう! もっと優しくさわってあげてね」と、お姉さんたちからは親身の注意がとんでくる。慌ててトモさんも赤ちゃんをだっこするように、やさ~しく。
「土いじりってやっぱり楽しい。心が落ち着きますね。」すっかり芋掘りにはまるトモさん。「うん、なかなかいい手つきになってきたよ」と日高さんにもほめられ、嬉しそう。


まだまだ芋堀りを続けていたいけれど、トッピーの時間が迫っている。そう、帰りは高速船で鹿児島港へ向かわねばならない。名残り惜しい気持ちのなか「じゃあ5kg、うーん足りないかな、やっぱり10kg。送ってくださいね。」日高さんと約束を交わして畑をあとにした。

渾身のレシピに乞ご期待!

From Producer
日髙保太郎さん

「ここ数年で、安納芋の認知度がいっきに上がり、みなさんに食べてもらえるようになったのは嬉しいことです。ただ、だからこそ、きちんと品質を管理しないと、ブランド価値が下がってしまいます。今後の課題は生産者一人一人がそこのところを自覚することでしょう。糖度の規定も10.7度ですけれど、できれば、もっと甘い状態で出荷したいし、もう少し基準も上げたいですね」

Profile
昭和35年に、父親が牛一頭を購入し、牛乳の生産加工までをする酪農業を始める。そのあとを継ぎ、酪農家として生計をたてるが、過疎化、少子化のなかで、酪農から農業へ転換。その際に、現代の安納芋ブームに先鞭をつけた上妻先生の指導で、4年ほど前から安納芋作りに取り組んでいる。安納芋以外の時期には、じゃがいも、スナップえんどう、パッションフルーツなどを育てる。

Tomo's Comment
「芋掘りといえば、昨年の千葉の畑以来かな。すごく楽しかったです。でも、皮を傷つけてはいけない、非常にデリケートで、掘るのが難しい芋だから、ずいぶんと気を遣いました。大人の芋掘りですね。焼いても揚げても、どんな調理法でも美味しい芋だけれど、蒸し立てに仏産エシレの発酵バターをたっぷりのせて食べる、そんなのって最高の贅沢かもしれません」

南種子食糧

鹿児島県熊毛郡南種子町西之1791

tel 0997-26-6032
fax 0997-26-6035


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  • 01 鹿児島ますや

    原種に近い鹿児島黒豚
  • 02 南種子食糧

    蜜の入った安納芋
  • 03 鹿北製油

    国産のごまで作る黒ごま油
  • 03 坂元醸造

    壺で発酵・熟成させる黒酢
  • 03 番外篇
    池浪刃物製作所


    本種子包丁と本種子鋏
  • 今月のレシピ[coming soon]
    鹿児島ますや
    ●豆乳ごま鍋の黒豚しゃぶしゃぶ
    ●ポークチョップのステーキ
     オニオン、マッシュポテト添え
    ●黒豚カツカレー すりごまソース
    ●グリーンベジのソテー ベーコン風味
    ●焼豚と香味野菜のサラダ
    南種子食糧
    ●安納芋のニョッキ ゴルゴンゾーラソース
    ●安納芋のポテトケーキ コーンソース
    鹿北製油
    ●ごま油の混ぜそば
    ●フムス
    坂元醸造
    ●かれいの唐揚げ 黒酢あんかけ
    ●生姜のはちみつ黒酢漬け

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