江戸時代、幕府のキリシタン弾圧から逃れるために一年中しめ縄を掛ける風習が生まれたという天草。ヴィラの玄関には、そんな文化の名残が…。

石山離宮 五足のくつ「Villa C」

- Amakusa, Kumamoto

エキゾチックな雰囲気を味わえるキリスト教伝来の地、熊本県天草へ。
山ひとつ切り拓いて作られた、とっておきのリゾートを訪れた。

バー&ライブラリー。自由に閲覧できる書籍やDVDのラインナップからオーナーの趣向がうかがえる。

ヴィラを目指して天草へ

伝統と新しさの融合が進む日本旅館。熊本県天草の景勝地、山懐に抱かれてひっそりと建つ「石山離宮 五足のくつ」は、旅情豊かに“和洋の融合”を成功させている。2002年7月の創業以来、この旅館は、遠く離れた東京にまで当時「予約の取れない旅館」として噂が流れていた。しかし、初めて訪れたのは、随分時が過ぎた2005年10月のこと。新たに「Villa C」というラグジュアリーな宿泊棟が新築され、それを目指して天草まで飛んだ。今回の訪問は2度目となる。

写真 左上:ヴィラ外観。
右上:客室には、あたたかな手書きのメッセージ。
中央:アジアンリゾートを彷彿とさせるインテリア。
左下:東シナ海を臨む天然温泉の露天風呂。ヴィラの外からはいっさい見えない造りになっている。
右下:アメニティはブルガリ。

アジアの中の天草

「石山離宮 五足のくつ」は、旅館の概念に囚われず自由な発想で作られている。現場を仕切る経営者の山﨑博文氏は、国内ばかりか海外の様々なホテルを周り、自身の体験からもてなしのマインドを確率させたホテリエだ。初のインタビューで、氏が語った言葉が印象に残っている。「お客様を快適にもてなすには、スタッフが幸せでなければならない」と。
この旅館で最も印象的なのは、地元で培われてきたキリシタンの歴史が館内に表現されているところ。旅人は、旅情を否応なしにくすぐられる。また贅沢なスペースも作られ、季節の良い時期には、テラスで東シナ海を望みながらチェックイン。また、館内に静かに流れる賛美歌や、礼拝堂と見紛うような美しいコリドール、エキゾチックなインテリアのバーなど、特別な演出や空気感もこの旅館の大きな魅力である。
2005年に新築(増築)なった「Villa C」は、それまでのAとBとは趣を違え、急斜面敷地の最も高い場所に高級感溢れる客室棟として建てられた。「Villa C」に泊まるゲストは独自のレセプションや食事処、オープンカフェが作られており、プライベートな特別感もある。これら5棟は、「キリスト教伝来の16世紀の天草」をイメージしているというのだ。この地にキリスト教や西洋文明が入り始めた頃、周囲には新たなる宗教や南蛮文化が浸透し始め、同時に政府との摩擦や弾圧が始まった悲しい歴史も残る。日本文化の黎明期、天草文化の残り香りが旅館の中に漂っている。

この地でしか味わえないもの

「石山離宮 五足のくつ」という屋号は、地元の海岸地帯に多く産出される天草陶石から、陶石の採れる山を「石山」と呼ぶことに由来する。宿の裏側は小高い山に覆われているが、この山も同類の石でできているというのだ。さらに見逃せないのは、敷地内に続く小径だ。日本の近代文学に大きな足跡を残した北原白秋、吉井勇、与謝野寛、平野萬里、太田正雄ら詩人5人が、当時長崎~天草~阿蘇へと旅をしながら、1907年に、それぞれが執筆者匿名で書いた紀行文が新聞掲載された。その際に歩いた縁の小径の一部が宿の敷地内を走り、「文学遊歩道」として整地されている。
多彩な魅力を秘めた旅館だが、私自身、滞在中の食事にも魅せられた一人である。山海の幸、豊富な食材、天草のこだわり野菜類が贅沢に調理される。3月~5月に旬を迎えるウニは、「ウニプラン」として振る舞われる。また、ブランドとなった鶏肉“天草大王”など、アレもコレも、皿や小鉢を飾る料理は“旬”の素材が活かされ彩りを添えている。決して手を抜かない朝食にも旅館の心意気が見えてくる。

写真上:天草大王を使った石焼鍋。
中央:ウニのお造り。
下:テラスにて朝食。和食か洋食を選べる。


石山離宮 五足のくつ

熊本県天草市天草超下田北2237
tel 0969-45-3633

アクセス:福岡空港から天草エアライン(約35分)で天草空港へ。空港からは車で40分ほど。宿泊者送迎あり。

客室料金:Villa A 26,400円〜/B 29,550円〜/C 46,350円〜(大人1名1泊2食)

部屋数:Villa A 6棟/B 4棟/C 5棟

温泉:有 スパ:無(客室でのトリートメント有、要事前予約)

www.rikyu5.jp

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