千興ファーム[馬肉の最高峰]

- Kamimakishi, Kumamoto

「熊本といえば、なんといっても馬肉でしょう。地元でなければ食べられない、フレッシュな馬肉が食べた~い!」と栗原友さん。東京で馬肉を食べさせるいくつかの名店に聞いたところ、訪ねるなら老舗の「菅乃屋」でしょうと、皆、口を揃える。目標は決まった、いざ、出馬!

サラブレッドの二回り、いや、三回りくらい大きい!というのが第一印象。

ストレスなく、みなで仲良く暮らしているせいか、穏やかで人なつっこい。

初めて見る馬のサイズに仰天

「菅乃屋」とは、寛政元年(1789年)に馬刺し専門店として熊本に創業した老舗だ。今では、広大な馬の牧場を持ち、飼育から精肉までの一貫生産のラインを持つ「千興ファーム」を母体とする名門だ。だから、鮮度が命の臓物や、旨みの凝縮した馬肉を食べさせることができる。
千興ファームに見学を申込むと、OKの即答。阿蘇から車で1時間半。広大な敷地の門の前まで5代目の菅浩光さんが迎えにきてくれている。さっそく牧場へと案内してもらった。
「わー、デカ!」その巨大な馬の姿にたじたじのトモさん。姿形はよく見知っている馬なのに、どうにもこうにも縮尺が違う。「逆ガリバーになった気分」と、目を丸くする。それでも、しばらくして慣れてくると、どの馬も優しい目をしていることに気づく。おそるおそる手を出すと、ひとなつっこく首をのばして、鼻をすりよせてくる。

熊本が馬肉のわけ

それにしても、“熊本といえば馬肉”が、あまりに定説になっているけれど、それは一体なぜ? 肥後国熊本藩の初代藩主であった加藤清正公が、朝鮮出兵時に食べて、その滋味に感銘を受けて広めたと言われている。以来熊本には、馬肉を食する文化が根付き、脈々と守られてきた。なにしろ、江戸時代には薬膳料理として食べられてきたほど、滋養の高さには定評があった。「でも、なぜ、九州の中でも熊本だけなのでしょう?」と聞けば、「武士の力がひときわ強かったからかもしれません」と菅さん。「おさむらいさん、それで強靭な身体を培ってきたんですね」と、納得だ。

馬肉用の馬とは

屠畜前には、体重測定やブラッシングなど入念な手入れが施される。

ご覧の通り、馬肉用の馬は、おなじみのサラブレッドとは随分異なる。フランスやベルギーなど、欧州が原産のブルトン、ペルジャン、ペルシュロンと、それらを交配したペルブルジャン種が主流。いずれも、前足、後ろ足とも太く、ボリューム感たっぷりで、体重もなんと1トン級! そして肉質は柔らかく、食味がよいのだ。
常時2000頭の馬を有する千興ファームでは、どのようにして美味しい馬肉を育てているのだろうか。
「生まれてから1歳までは牧草地で飼育して強い内臓と骨格を作ります。その後、2~3歳になるまできれいな肥育舎で育てます。麦、ビール粕、とうもろこし、牧草などをたっぷり与えることで、旨みに富んだ柔らかい肉になるのですね」と菅さん。「この飼い葉桶に入っているのが、ブレンドされた餌なんですね?」とトモさん。そう美味肉の源だ。

麦、ビール粕、とうもろこしなどをブレンドした自家飼料をたっぷり食べて育つ。

馬肉が身体にいい理由と
千興ファームならではの安全性

江戸時代には薬膳料理として珍重された馬肉だが、飽食の時代を経て、昨今、改めて馬肉の優位性が注目されている。その理由としては脂肪分が少なく、牛肉、豚肉より低カロリー。しかも馬肉の脂肪は、魚のそれに似て不飽和脂肪酸が多く、特にコレステロールを下げるリノール酸、リノレン酸をたっぷり含み、血管を丈夫にして、動脈硬化を防いでくれる。そして何より、馬肉が滋養に富み、スタミナがつくと言われる一番の理由がグリコーゲンにある。馬刺しのほんのり甘い味わいの源も、実はグリコーゲン。それは、肝臓に蓄積されたのち、ブドウ糖に転嫁されてエネルギー源になるから。スタミナを増強し、疲労回復を促してくれる。 また、貧血を防ぐヘム鉄が多いのも女性には特に嬉しい点。さらに、たんぱく質に含まれるペプチドには、身体を温めたり、毒消しの薬効もと、いいことだらけだ。「大好きな馬肉を食べてダイエットなんて、もう、最高!」

寿司屋のごとく、馬刺しを賞味

とろりとセクシーな食感、ほんのりと甘い身質…、馬肉の醍醐味はなんといっても馬刺しにあるが、馬肉が生食されるにも、ちゃあんと理由がある。それは、グリコーゲンの効果で体温が高いことと、ペプチドの働きにより、抗菌性に優れているからだ。同時に、肉用馬は極端に大きい心臓に比べて、肝臓、腎臓などの解毒機能の内臓が小さく、抗生物質やホルモン剤を受け付けないという特質があり、その点からも安心。
徹底的に衛生、温度管理された千興ファームの設備と、馬肉そのものに備わった生食に向く特質。その二つが合わさった「菅乃屋」の馬刺しは、鉄壁というわけだ。
「菅乃屋 上通店」を訪れると、寿司屋さながらに、カウンターの上に、赤身から内臓まで、さまざまな部位がずらりと並んでいる。客は好みの一貫ならぬ、好みの部位を1切れからオーダーすることができる。「内臓好きとしてはもうたまらないです~!」とトモさん。料理長におねだりして、さっそく、いくつかの部位を切ってもらって試食をした。「う~ん、とろける!」

ショーオビ 霜降りの真ん中の部分。濃厚な赤身の滋味と、脂の甘みが交錯。

オビ 霜降りの中では中トロくらいの食べやすい部位。

サンカクバラ 一番高い大トロの部分。 脂のサシも入っているので、一番甘みが強い。

ロース 最高級の赤身。 柔らかさと甘みのバランスが最高。

ハツ 心臓。コリコリとした食感と香り、滋味が命。限られたところでしか食べられない希少部位。

バラウス バラの外側の部分。最終的にこれが好きという人が多い。 

タン まったりとした弾力のある、独特の質感。

フタエゴ バラの一番外側の部分。肉が脂肪にはさまれている。食感があって楽しい。

ヒモ(カルビ) アバラの骨と骨の間の部分。焼き肉やカレーになどに向く。

タテガミ 立髪に沿って、皮膚の下に位置する部位。コラーゲンのかたまり。

ロース、タテガミ、中トロ、タン、サンカクバラ、オビ、フタエゴの刺し身盛り合わせ。

ほかにもバラエティに富んだ料理が続々

現地でなければめったに食べられない、貴重な「レバー刺し」。

馬骨でとったスープでさっとオビ肉をしゃぶしゃぶする、ハリハリ鍋。

はふはふと柔らかい肉を口に運び、スープの旨みを堪能。

じっくり煮込んだデミグラスソースが絶品の「柔らかホホ肉シチュー」。

噛むほどに滋味が口中にほとばしる、「霜降りステーキ」。

「コウネ(タテガミ)の軍艦巻き」。コラーゲンのかたまり!

「こんなにおいしい馬刺しを食べたの初めてです!」と、大興奮。けれどそれは、まだまだ助走にすぎない。バラエティに富んだ馬肉料理こそが、「菅乃屋」の真骨頂だから。
細かく刻んだ馬肉と納豆を合わせた桜納豆、馬スジのふろふき大根、馬ホルモンのにんにく炒めなどのつまみから、しゃぶしゃぶ、ステーキ、こっくり煮込んだシチューまで、実に多彩。しかもどれもが馬肉ならではの滋味にあふれている。「うーん、満足、大満足」
支店には、よりリーズナブルにホルモン料理が食べられる「菅乃屋ホルモン」tel 0120-150-834 や、馬肉のステーキやハンバーグがメインの「菅乃屋西原店」tel 092-286-0268、馬肉の焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きを堪能できる「菅乃屋銀座通り店」tel 096-312-3618 もある。この3月には、「菅乃屋JR博多シティ店」tel 092-413-5117 と、初の県外店のオープンで、ますます勢いにのる。「今度は絶対『菅乃屋ホルモン』を訪ねますね!」と菅さんと約束して店をあとにした。

菅乃屋 上通店
熊本県熊本市城東町2-12
ライオンパーキングビル2F
tel 096-355-3558

渾身のレシピに乞ご期待!

From Producer
菅 浩光さん

「馬刺しを守ることは熊本県の食文化を守ること。これこそ千興ファームの使命だと思っています。そして、尊い命を捧げてくれる馬に対しては、常に感謝の念を持ち、べストな状態で無駄なく美味しく食べてあげること、それがいちばんの供養だと思っています。そのためにもクリーンな工場で迅速に処理することが大切。だから千興ファームでは、オーストラリア政府が開発した食品安全認証制度SQF2000を取得しました。最高の設備だと、誇りを持っています」

Profile
老舗「菅乃屋」の5代目。幼い頃から牧場や自社工場、店舗で過ごすことで、肉用馬に親しむと同時に、知識を高める。現在は千興ファームの取締役営業本部長として、よりクオリティの高い馬肉づくりに奔走する。また、県内の消費にとどまらず、食文化としての馬肉の魅力を県外に広めていくことに力を入れている。

Tomo's Comment
「生まれて初めて見た肉用馬。とにかく、その大きさに最初は驚きました。でも、しばらくすると可愛く見えてきて。この子たちの肉が、大好きな憧れの馬肉なんだと思うと、愛おしさもひとしお。赤身も内臓系も、馬刺しはどれも初めて体感した鮮度、質感、旨み……。はっきりいってやみつき。このためだけに、熊本に住みたい!って思ったほどです」

千興ファーム

熊本県上益城郡御船町高木2530

tel 096-282-7677


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