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料理家・栗原 友が訪ねる、九州こだわりの美食材 explore & cook vol.4 熊本県[探訪編] >

工房 阿蘇ものがたり[トマトジュース&ケチャップ]

工房 阿蘇ものがたり[トマトジュース&ケチャップ]

- Aso-city, Kumamoto

憧れの馬肉巡礼から始まった熊本の美食材探訪。せっかく熊本を訪れるなら、もっと熊本を知りたいと、東京銀座の熊本物産館を訪れた栗原知さん。これ、おいしいですよと薦められたトマトジュース。ごくり。濃厚で甘いのにキレがいい。聞けば、熊本県は、トマトの生産量が日本一だという。さっそく製造元である「工房 阿蘇ものがたり」に取材を申し込んだ。

阿蘇のトマトで加工品

トマトの収穫も終わりに近づいた11月の初め、トマトケチャプの生産に忙しい工房を訪れた。案内された工房の中にはぷ~んと甘酸っぱい香りが立ち込めている。80ℓ入りの大きな釜でトマトケチャップを煮詰める最終段階だという。
「工房 阿蘇ものがたり」は、1991年に、阿蘇の特産物の加工品を作ろうと、設立された会社だ。熊本はトマトの生産量日本一。なかでも、標高の高い阿蘇は、夏でも冷涼で、昼夜の寒暖の差が大きく、水質もよいと、上質なトマト生産の条件を備えている。代表の吉田清ニさんは、JAで活動しながら、トマトの選果場に集まる余剰トマトの利用に目をつけた。夏から秋へかけての最盛期には、路地に近い状態で育ったトマトのうち、JAの規格外品――収穫には過熟の実や、形の不具合など、完熟度は高く美味しいのに出荷できない品々ーーが選果場に山積みとなる。到底、自家消費だけでは処分しきれない。廃棄するのはあまりにもったいない。なんとかこのおいしさをダイレクトに生かしたい……と、トマトジュースなどの加工品にすることに思い至る。それが創業のきっかけだ。会社名もずばり「工房 阿蘇ものがたり」。地元の素材への愛があふれている。
「それにしてもおいしいですね」と、ごくごくとジュースを飲む。甘みと酸味のバランスが抜群で、コクがあるのに、あと味はあくまでもすっきりしている。嬉しいことに、価格も良心的だ。昨今、プレミアムトマトジュースがブームだが、贈答品ならともかく、デイリーに飲むには高すぎる品も多い。
「本来、嗜好品ではないのですから、トマトジュースはこうあるべきですよね」と一人頷く。

こんなおいしいトマトジュースで作ったら、最高!と早速試してみたのが、ビールをトマトジュースで割るカクテル「レッドアイ」。

自然のままのトマトジュース

トマトジュースの作り方は、以下の通り。きれいに洗った完熟トマトを皮ごと粗切りにして、塩少々以外は一切加えずに煮る。時間にして、30分。濃度がつくくらいが目安だ。その後漉し、瓶詰めして加熱殺菌。 「何も足さない、何も引かない。だから、トマトそのものの、品質が何より大切なんですね」 「甘みはともかく、酸味や旨み、これは添加することができません。だからこそ、阿蘇のトマトが生きてくるのです」と吉田さんも胸を張る。

桃太郎トマトの畑を訪ねて

おいしいトマトがあって、初めて美味なるトマトジュースができることがよくわかった。加工はあくまで、風味をそっくりそのまま残して瓶に詰めるための手段。料理のように素材をおいしくするためのものではないということも。
工房から車で10分、大きなハウスが並んで建つ、トマト農家へ案内してもらった。標高の高い阿蘇では昼夜の寒暖の差が大きいから、甘みも酸味も強い、野趣あふれるトマト栽培が可能になる。この野趣こそ、トマトジュースには欠かせないものなのだ。5月上旬に植樹された桃太郎は、接木、脇芽摘み、極力農薬を減らしての除草など、手塩にかけて育てたのち、8月終わりから収穫される。トモさんも、畑でもいでもらったトマトをがぶり。 「わあ、トマトそのものがこれだけおいしいんですね」と納得する。こうした心ある生産農家のトマトが集まる阿蘇の選果場があって初めてできる「阿蘇ものがたり」なのである。

皮ごと刻んだトマトをミキサーにかけ、ピューレ状にし、そのまま大鍋に入れて煮詰める。充分にとろみが出るまで煮詰める。この時点で約2時間。

まず砂糖を加え、次に塩、最後に酢で溶いた秘伝のミックススパイスを加える。

糖度計で測り、15度になっていればOK。まだなら、さらに煮詰めていく。

煮上がったトマトジュースを機械に移し、瓶に詰め、密閉。

熱湯の中で30分。煮沸消毒完了。化学調味料や保存料は一切無添加であることがよくわかる。

トマトケチャップづくりを拝見

「工房 阿蘇ものがたり」のもう一つの主力商品はトマトケチャップだ。今回はトマトケチャップづくりの様子を見せてもらった。
「うわ、濃くて甘い!」
出来上がり間近のケチャップをぺろりとなめて、「うーん、これでナポリタンが作りたい」と、にっこり。もちろん、ただ甘いだけではなく、トマトの滋味にあふれている。そしてちょっぴりスパイシーな味つけがと大人っぽい。
トマトジュースに始まった「工房 阿蘇ものがたり」も、今や、焼肉のたれからドレッシング、ジャムまで、28の商品ラインアップを誇る、一大工房。保存料などは一切使わず、化学調味料もほぼ無添加の、安心&安全の手づくりだ。そして、どの商品もセンスのいい、キレのいい味つけが魅力になっている。地元のおみやげ屋さんにありがちな味のレベルを想像したら大間違い。どれも、そのクオリティの高さに驚く。「わー、いろいろ試してみます! レシピも広がりそうです」とトモさんも大喜びだ。

渾身のレシピに乞ご期待!

トマトケチャップ

 

トマトジュース

 
↓   ↓
 

懐かしのナポリタン

 

父直伝 トマトシチュー

From Producer
吉田 清ニさん

「一番おいしい時期の完熟トマトなのに、出荷できないというのはなんとも残念。それで思いついたのが加工品です。“地産地消”を一番に考えました。ほかにも、自分のところで、完全に無農薬の米を作っています。それを、蔵元に持ち込んで日本酒に仕込んでもらう。すっきりとして、実においしい日本酒に仕上がりました。加工の技術はもとより、素材そのものの力が大切なんですね」

Profile
熊本県阿蘇埋まれ。農家の二代目として、熊本・阿蘇の風土・魅力を生かした農業に幅広く取り組む。JAの中心で活動したことから、一段と、地域の活性化につながる農業を目指すようになる。現在は、米農家と畑の二足のわらじ。

Tomo's Comment
「トマトジュースは大好きなのに、なかなか気に入ったものがないのが現状。塩が強かったり、甘みが足りなかったり、値段が高すぎたり……。そんな中で、この「阿蘇ものがたり」は、実にバランスのいい1本だと思います。これだけの商品を作れるところは絶対にセンスがいいと思ったのですが、その通りでした。トマトケチャップやジャムはもちろん、焼肉のたれに至るまでおいしい。甘ったるくないんです。素材はなるべく阿蘇のもので、という姿勢も素敵ですね」

工房 阿蘇ものがたり

熊本県阿蘇市一の宮町宮地538-1

tel 0967-22-1475


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