JAやつしろ[甘~い塩トマト]

- Yatsushiro-city, Kumamoto

熊本が有数のトマトの産地であることは学んだけれど、最近人気の、小ぶりで甘い「塩トマト」、これも確か熊本産のはず、と思い至った栗原友さん。ところで、塩トマトの塩って何? 塩味がするわけではなし……? そんな素朴な疑問から、塩トマト探訪は始まった。ネットで調べたところ、八代市がメッカのよう。さっそく、「JAやつしろ」を訪ねた。

塩トマトってどんなトマト?

奥が塩トマト、手前が普通の桃太郎。大きさの違いだけでなく、断面の違いも一目瞭然。右の塩トマトには、種の部分にも、果肉にも、グリーンが残っている。

「まずは、普通の桃太郎と、塩トマトを食べ比べてみてください」と販売の谷口譲さん。薦められるままに食べてみる。「ウソ! ぜんぜん違う! もちろん、普通の桃太郎も充分においしいけれど、こちらの甘さはすごい! 驚きました」とトモさん。
「八代は干拓地なんです。海岸べりだったところに畑を作っている。だから、畑の下に何本も塩の道が通っていて、畝によっては、塩が強く上がってくるところがあります。すると、根から吸収される水分が制限され、あまり大きくならずに、甘みが凝縮し、糖度が上るのです」と説明してくれた。水やりを極力減らして、原産地アンデスの環境に近づけ、成分を凝縮させることで甘みや旨みを増したフルーツトマトと同じ原理だ。種を明かせば、塩トマトの品種自体は、一般的な“桃太郎”。だから、同じ区画の中でも、ここの畝は塩トマトになり、隣の畝は普通のトマトになるという現象がおこる。つまり、塩トマトは偶然の産物。ほんの10数年前までは、突然変異のようにできたこれを、大きさで値段が決まる市場には出せないと、農家が自家消費していたのだとか。ところが、フルーツトマトの普及で注目を集め始め、今では一大ブランドとして認識されるようになったのだ。
「塩トマトの苗を売ってください、という電話が、ときどきかかってくるんですよ」と谷口さんは笑う。「わー、人のこと笑えない。だって、今の今まで、私も、塩トマト固有の品種があるのだと思ってましたから」。知らないことばかりだ。

約200匹の蜂が巣箱とハウス内を自由に行き来している。蜂は黄色いものに集まる習性があるとか。ハウスの中では黄色いセーターはゲンキン。

発泡スチロールでできた高下駄で、樹の上のほうでもらくらく作業。

塩トマトの畑を訪ねて

続いて栽培の現場へと、案内してもらった。大型のハウスで塩トマトを栽培するベテランの古川夫妻。1月だというのに、ハウスの中はいっぱいの光を浴びて春のようだ。整然と整列したトマトの樹には、花から小さな実、そして明日には収穫というほど熟したトマトまでが時間差でなっている。桃太郎の苗は9月に植えつける。11月までは、カルシウム、リン酸、米糠を混ぜた有機の肥料で栄養を与え、気温が下がってからは肥料はやらずに育てる。その間、10、11、12月とだんだんに塩が上がってきて、水分を吸収しにくくなる。そして、1月から収穫が始まり2月、3月が最盛期。だから、1月の今は、ちょうど実がなり始めたところというわけ。そして、4月で収穫を終えた苗はそのまま枯らせ、6月に刈り取り、土にすきこんで、来季の土を作る。
気づけば、ぶ~んぶ~んと蜂の羽音が聞こえる。200匹の蜂が、受粉のために飼われているのだという。
「ほんとに働きものなんですよ。1匹で1日で2000個の花を受粉させることができるんですから」と古川さん。たった200匹の蜂が、シーズン通して100万個もできるトマトの受粉をすべてを行うというのだから、習性とはいえ、感心せざるを得ない。ハウス内に蜂を導入するまではホルモン剤を使用していたというのだから、その点もメリットだ。

甘~いトマトの見分け方

へたの近くの右側の部分が赤くならずに緑色になっているが、これがバックグリーン。糖度が高いであろう目安の一つだ。

雌しべの側からガクへ向けて、放射状に筋張っているのも、吸い上げている水分が少ないからで、甘みの強さの判断材料になる。

広いハウスの中でも、塩の道の場所、つまり糖度が上がるポイントは大体決まっているという。それでもさらに個体差があるのは自然の産物ゆえ。甘い、旨いは外見でわかるのだろうか?
「簡単な見分け方を教えましょう」と古川さん。「へたに近い部分に緑の斑が出ているでしょう。これは未熟なのではなく、バックグリーンといって、甘みが強く出ている証です」
「へえ、赤いほど味が濃いのかと思っていました。なぜ緑が目安なのですか?」
「塩トマトは、塩の影響で、根自体が弱くなっています。だから、根から吸い上げた窒素を分解しきらいないことが多くあり、それが緑の斑になるのです。だからバックグリーンが出ていれば、水分を吸い上げていない=旨みが凝縮している、という理論です」
そしてもう1つ、雌しべからの放射線状のラインがくっきり筋張って出ているもの。これも糖度が高い証だという。
「じゃあ、お店で買うときはその2点に注目ですね。籠に盛ってあるものだったら、ちょっとひっくり返しちゃったりして」と笑うトモさん。

トマトをのせると、糖度と質量が表示される仕組み。糖度によって3段階に種分けされる。糖度10度以上なら、ロイヤルセレブだ!

糖度計でひとつずつ計って出荷

しかしながら、最終的な糖度は計測しなければわからない。朝収穫したトマトは、すぐに集荷場に集められ、糖度計も兼ねたはかりの上に1個ずつ置かれ、糖度と質量を計測する。
糖度10度 以上で「ロイヤルセレブ」、8度以上で「太陽の子セレブ」、7度以上で「朝露姫」と名づけて分けられ、箱詰め後、出荷される。最高級の「ロイヤルセレブ」でも12個入りの箱(大きさによって11~13個)が直販価格で1600円。東京の高級スーパーが2個600円くらいで売っていることを考えると、農協から直接購入すれば、送料を入れても、かなりお得だ。
「これなら、おしげなくセミドライトマトにもできそう」と大喜びのトモさん。レシピの幅も広がりそうだ。

渾身のレシピに乞ご期待!

From Producer
古川 寿男さん

「塩トマトが知られ始めるようになって15年。偶然の産物とはいえ、丁寧に手をかけて育てた結果にほかなりません。たとえば、トマトの苗は、自根ではなく、すべて接木。まだ苗の小さい9月頃に接ぐのですが、骨の折れる仕事です。これをしなければ、丈夫に育ちませんから。農薬もできる限り減らしています。ただ、残念なのは、糖度が6、7度しかないのに塩トマトと名づけて売る、心無い生産者もいるということ。“やつしろの塩トマト”のブランド価値を高めるためにも、高品質のものだけを販売するようにしたいです」

Profile
1950年生まれ。八代でも随一の塩トマト生産者として、内外から高い評価を得ている。長年の塩トマト栽培、普及の功績により、平成22年度熊本県農業コンクール特別賞、優良賞を受賞。JAやつしろトマト選果場利用組合高糖度部長。

Tomo's Comment
「塩トマトがなんたるかを知ったのは、ほんとに勉強になりました。糖度10%以上となると、全生産量の10%。稀少なものゆえの値段の高さはしょうがないけれど、それにしても、東京で買うとなぜあんなに高いんだろう……。これからは、絶対に「JAやつしろ」で箱買いします」

JAやつしろ 南部館

熊本県八代市植柳下町字本田2190-1

tel 0965-39-7781


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