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料理家・栗原 友が訪ねる、九州こだわりの美食材 explore & cook vol.4 熊本県[探訪編] >

山のいぶき 高村武志牧場[山吹色のジャージー牛乳]

山のいぶき 高村武志牧場[山吹色のジャージー牛乳]

- Aso, Kumamoto

あのCasa BRUTUSで絶賛された牛乳が、阿蘇にあるのだとか。噂の真偽を確かめるべく、阿蘇山の外輪山に位置する黒川温泉の中ほどにある「高村武志牧場」の加工場に赴いた。牧場という名から、ヨーデル♪な雰囲気を思い浮かべていたら、え、と拍子抜けするくらいに、こぢんまりと和風で可愛い。がらりと引き戸を開けて「こんにちは~」。にっこりと迎えてくれた高村武志さん。さっそく自慢の牛乳」をごくり。「わあ、こんなにおいしい牛乳飲んだことない」と声を上げるトモさん。「山吹色のジャージー牛乳」の名の通り、ほのかにクリーム色。その口当たりはリッチでマイルドでクリーミーだ。

高村武志さんと奥様の千帆さん。牛舎の前で。初冬の頃、干し草の手入れに余念がない。

高村さんの目指す牛乳とは

高村さんは、20年前、高校卒業と同時に、親の代からの牧場を引き継ぎ、しばらく共販用の牛乳を出荷する生産農家を続けた。しかし、店頭で安売りされる牛乳を見るたびに、自分の作る牛乳の価値はそんなものではない、真価を消費者に問いかけたいという気持ちが強くなっていった。そして、牧草のための土づくりから始まり、牛を育て、牛乳という製品に仕上げ、消費者に直接届けるまでの一貫生産を目指し、5年前に現在の業態に踏み切った。
「牛乳にはデイリープロダクツとしての側面と、味を楽しむ嗜好品としての2通りがあると思います。私が勝負するなら後者、牛乳の最高峰、喩えていえば牛乳のエルメスを目指したいと思ったのです」と高村さん。
一方が1ℓ200円、かたや1ℓ850円。それなら、明らかに美味しさに差異や付加価値がなければだめ。そのためにはどうするか。高村さんがこだわったポイントは3つだ。
● クリーミーでコクがあるジャージー牛乳本来の味を追求すること
●(そのために)自家生産の牧草にこだわること
● 低温殺菌&ノンホモゲナイズド製法を採用すること

ジャージー牛とは?

ジャージー牛とは、ホルスタインよりニ回り以上小さい、明るい茶色の毛の、優しい目をした牛だ。そもそもはイギリス海峡に浮かぶジャージー島で乳牛として品種改良された牛。搾乳できる量は少ないが、乳脂肪分とタンパク質、ビタミンやカルシウムなどのミネラルが豊富で、味わいは濃厚かつクリーミー。その風味のよさは、長らくイギリス王室御用達だったほど。「搾りたてのジャージー乳が薄淡い金色をしていることから、別名ゴールデンミルクと呼ばれているんですよ」
「あ、だから山吹色のジャージー牛乳なんですね?」とトモさん。
「そう。それと、母牛からの初乳は濃い山吹色をしている。それは、生まれたばかりの仔牛に必要な免疫成分が多く含まれているから」そんな意味もあって命名された名前だ。

加工所の向いにある自然薯料理の店「やまたけ」の前では、天然ミネラルで育てられた元気な野菜が売られている。

自家栽培の牧草へのこだわり

現在、高村さんは80頭のジャージー牛を飼育している。朝夕の搾乳時にはブラッシングを通して、一頭一頭の健康状態を細かくチェック。また、寝床を清潔に保つなど、ストレスがかからないように細心の注意を払う。しかし、牛乳の味はなんといっても餌で決まると、飼料には最も手をかけている。自給飼料は、乳酸菌ミネラル(詳しくは後述)を用いて自家生産している牧草だ。農薬などを使わないという安全面での保証はもちろん、なにより、おいしいのだとか。
「実はね、僕も、食べてみるんですよ。牛の気持ちになって」と、にっこり笑う。
「えーほんとですか? 究極のこだわりですね」とトモさんが目を丸くする。
柔らかくって香り高い、三ツ星の牧草。これなら、グルメの牛だって絶対満足。おいしいミルクが出るはずだ。その牧草をお腹いっぱい食べさせて乳脂肪分5%以上の高い乳成分を実現。ホルスタインの平均で3.3%、ジャージー牛で4.5%というから、いかに、高村さんの牛乳がクリーミーかがわかる。

低温殺菌とノンホモゲナイズドが美味なる理由

原乳がいくらおいしくても、最終の殺菌の段階で風味を壊してしまっては台無しだ。高村さんは、65°Cで30分かけてじっくり処理する低温殺菌を採用。そして、そのまま容器に詰めて出荷している。
牛乳嫌いは、なんといってもあの匂いが嫌い。でも実はあれ、120°Cの高温で2秒間殺菌することにより、タンパク質が変性した焦げ臭。当然のことながら、牛の乳が本来持つ柔らかな甘みや風味もこわれる。単純に考えても、製造にかかる時間は900倍。1日に製造できる牛乳の量も限られる。しかしながら、風味においては比べものにならない。特にジャージー牛乳は乳脂肪分が多いだけに、差が出やすいのだそうだ。
そしてもう一つ、自然のままのクリーミーな風味を保つには、そのまま瓶に詰めるのが一番。つまり、ノンホモタイプだ。ホモゲナイズドとは、脂肪球をたたいて均一に砕くこと。これにより賞味期間を長くすることができる。ノンホモだと(つまり、この作業を行わないと)、大きな脂肪球同士がくっついて、上にクリームが浮いてくる。賞味期間は短くなるが、ありのままの牛乳の姿だ。コストや効率を度外視すれば、低温殺菌+ノンホモがベストな選択。改めてごくり「なるほど、おいしさの違いは、ここにあったんですね」と納得する。

ヨーグルトなどの加工品いろいろ

ジャージー牛乳本来のクリーミーさを備えた「山吹色のジャージーヨーグルト」

若きパティシエとのコラボレーションで生まれた、ふるふるの「山吹色のプリン」

なんだか優しい気持ちになれる、素直なおいしさですね。素材へのこだわりが伝わります。

同じくコラボ作品の生チョコレート「クレームキャラメルショコラ」。口に入れたとたんに溶け出す柔らかさ。

こうしたおいしい牛乳を原料に、高村さんは極上の加工品づくりにも力を入れている。その代表が「山吹色のジャージーヨーグルト」だ。安定剤などを一切使用せず、より自然に近い状態で発酵させた製品。容器の中で熟成が進んでいくため、日が経つにつれ、異なった味わいが楽しめる、“生きた”ヨーグルトなのだ。
また、旅館の女将さんたちに意見を聞きながら、地元のパティシエと共同で作った「黒川温泉湯上りカフェオレ」。「風呂上りに浴衣姿で飲んでほしいなと思って」と笑う。

むかごを炊き込んだごはんにたっぷりかけて食べる、「とろろ」は看板料理。皮付きのまますりおろした自然薯を団子にした「だご汁」と、煮しめや小鉢をあわせて。

皮とともにすりおろした自然薯をふんわりまとめてフライパンでソテーした「自然薯ステーキ」。

向いの「やまたけ」で
自然薯料理に舌鼓

加工場の向いには、自然薯料理の専門店「やまたけ」がある。酪農と合わせ、長年、多種の野菜を作ってきたお父親の公明さんは、30年も前から自然薯栽培に取り組み、息子に牧場を譲ったあとは、それを本業としている。
より自然に近い環境でなければ本物は育たない、とうこだわりのもと、人里離れた標高500mの畑をその地に選び、強い粘りと濃厚な旨みを持つ自然薯を作り続けている。「やまたけ」では、その自然薯を使った多彩な料理を供する。メニューは、高村さんのお祖母さんが家で作っていたものをべ―スにしたレシピで、現在はお母さんが作っているのだそう。とろろ膳、だご汁、ステーキ、お好み焼き……。ふんわり、もっちりとコシのある食感は唯一無二。体によくておいしいのだから、やみつきだ。
店で使う野菜や米、味噌なども、公明さんが「天然ミネラル乳酸菌」で自家栽培したものを使用している。
それは、化学肥料を使わず、ミネラル分が豊富に含まれる天然の鉱物を細かく砕いたものに乳酸菌を配合して土壌に混ぜて栽培する方法。化学肥料を使った場合に野菜にあらわれる「えぐみ」がなく、野菜本来の味が楽しめるのだとか。
自然の力が凝縮した牧草、それをお腹いっぱい食べたジャージー牛が生み出す乳、そしてその風味を人間の手で最大限に守った結果が「やまぶき色のジャージー牛乳」なのだ。

渾身のレシピに乞ご期待!

牛乳

 

ヨーグルト

 

自然薯

 
↓   ↓   ↓  
     

豚肉のミルク煮
ローズマリー風味

 

馬肉のインドカレー

 

自然薯のペペロンチーノ

 

From Producer
高村 武志さん

「牛乳を通しての出会いが楽しくてたまらないですね。まず一つが消費者との出会い。うちの加工所は、庭づたいに外からぐるりと、殺菌や瓶詰めの様子が見学できるようになっています。お客さんに牛乳のことを知ってもらいたいという思いと同時に、できる限りお客さんの顔を見たいからの、仕掛けです。そして、パティシエとの出会い。プリンやチョコレートなどの加工品を作ることで、素材としての牛乳のさらなる可能性を追求することができました。おいしい牛乳があるからこそできる製品であり、またレシピの素晴らしさによって、本来の魅力が花開く。これからも、牛乳に秘められた可能性をさらに追求したいと思っています」

Profile
高校卒業後、父の後を継ぎ就農。小国ジャージー牛乳の若手生産者の一人として酪農に取り組んできたが、2006年一念発起し自らの名前でブランドを立ち上げる。2009年黒川温泉内の父の店の隣に加工場兼販売所を建設し現在に至る。現在38歳。祖母と両親、妻と3人の娘の大家族。自称「日本一売り場に立つ酪農家」。

Tomo's Comment
「牛乳であって牛乳じゃない。最初に一口飲んだときに、そんな風に思えるほどリッチでした。「嗜好品としての牛乳」という、高村さんの言葉が、実に的を射てると感じました。瓶の中で生きているという、クリーミーなヨーグルトにいたってはますますそんな印象。小さなドリンクヨーグルトを毎朝出すオーベルジュもあるそうで、ぴったりですね。さらに、プリンやキャラメルショコラとなれば、若手パティシエとのコラボ作品だそうですが、東京と時差のないおいしさです」

山のいぶき 高村武志牧場

熊本県阿蘇郡南小国町黒川温泉

tel 0967-44-0930 


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