小山薫堂とせきねきょうこが語る、九州の宿に泊まる魅力

- Interview with Kundo Koyama and Kyoko Sekine

九州の魅力を再発見

せきねきょうこ(以下 せきね):九州って豊かな自然があって、美味しいものがたくさんあるのに、当の九州の方たちはそれを特別なことだと思っていない。商売っ気が薄くて、とてものんびりしてる方が多いですよね。

小山薫堂(以下 小山):僕は熊本出身で、熊本県の新幹線元年事業のアドバイザーをやっているんですが、熊本県民にとって当たり前でも観光客の目線で見るとびっくりするっていうものがたくさんあることに、みんな気付いていない。だから、その“びっくりするもの”を観光資源にしようというプロジェクトを立ち上げたんです。自分たちが住んでいるところの価値を再発見することによって、まず自分たちが「いいところに住んでるな」って幸せな気持ちになって、それから観光資源として外に発信する。たとえば熊本の水道は、阿蘇から20年かけてわき出した“100%地下水”なんですよ。毎朝ミネラルウォーターで顔を洗って、歯を磨いているわけで、それってすごい贅沢なことですよね。そこに気付くと、日常が少し輝く。

せきね:外国のものが日本で最初に入ってきたのは、九州ですよね。九州は異文化を受け入れてきた歴史があるところだし、逆に、ホスピタリティなんていう言葉じゃ表せないぐらい細やかな、日本の「おもてなし」も、九州独自のスタイルがあるんじゃないかって思うんです。実際には九州流のおもてなしって、あるんでしょうか?

小山:そうですね、おばあちゃんが孫の世話をするようなおもてなしが多い気がしますね。肉親みたいな接し方というか。決して上の人に仕えるとか、従うとか、そういうものじゃない気がします。

せきね:それってすごくあたたかいですね。確かに、鹿児島の「雅叙園」にお邪魔したときに、いまはあまり見かけなくなった“割烹着”を着た地元のおばあちゃんたちが、朝から一生懸命薪でご飯を炊いてくれていたんですよ。そのとき、本当にいま薫堂さんが仰っていたような感じがしました。九州で、「ここはぜひ!」っていうホテルや旅館はありますか?

小山:阿蘇にある「産山温泉やまなみ」という旅館。高級感や派手さはないけれど、田舎の友だちの家に泊まりにきたような感じで、僕はすごく好感を持ちました。みんなで一緒に囲炉裏端でご飯を食べるんですけど、お料理が美味しくて、朝もお漬け物が30種類もあって。

せきね:それは素敵! 朝ご飯がちゃんとしている旅館やホテルはいい宿だと思います。

宿に泊まるということ

せきね:この連載の初回は、熊本県・天草の「石山離宮 五足のくつ」を取材したんですけど、宿泊されたことはありますか?

小山:ありますよ。実はつい最近も近くで撮影をしているときに、朝ご飯だけ食べさせてもらいに行きました。オーナーの山崎さんからオープンの半年ぐらい前に手紙をいただいて以来のお付き合いなんですけど。講演会で「どうしたら天草が発展すると思いますか?」という質問に、「1軒本当に上質で小ぶりな宿があったらいい。それが本当によければメディアがやってきて、天草が有名になり、周りの人がそれに合わせて一生懸命やっていくから、行政がやるよりもいいはずだ」と僕が答えたんです。その後、山崎さんから「自分がやろうとしたことは間違ってないんだと確信を得て、つくった宿が半年後にオープンします」という内容の手紙を送っていただいたんですよ。その宿が「石山離宮 五足のくつ」なんです。そういえば、天草にはもうひとつ面白いところがあります。崎津という隠れキリシタンがたくさんいた漁師町の漁港に、畳敷きのチャペルがあるんですけど、その写真を見たフランス大使がどうしてもそこに行きたくなって、近くの「みなとや旅館 別館」という民宿に夫婦で泊まったらしいんです。そこで窓を開けたら目の前にチャペルがあって、田舎町が広がって、その向こうに船が並んでいるという光景にいたく感動して、「ル・モンド」か何かの記者に話したらすぐに取材に来たとか。それを聞いて僕も行きました。その旅館で「ここにフランス大使来ましたか?」って聞いたら「さぁ〜、外人さんが最近よう来らすですよね〜」って言われちゃったんですけどね(笑)。

せきね:それはいいお話。そもそも、薫堂さんがホテルを好きになったのはなぜ?

小山:僕は高校生の頃からホテルが好きだったんですよ。なぜかと聞かれると困るんですけど…高校生の頃に、ホテルに泊まりたいがために大学をいっぱい受験したんです。ここを受けるとニューオータニ泊まれるとか、考えながら(笑)。

せきね:ホテルや旅館に泊まっていて「ここが好き」って感じるのはどんなところですか?

小山:僕は日常を俯瞰するという行為がすごく好きで、飛行機がすごく好き。上からいろんな世界を見るせいか、すごく客観的に冷静に自分がいま置かれている状況を分析できるんです。ホテルもそういう場所な気がするんですよ。自分の日常を見つめるための場所みたいな。

せきね:前にお話伺ったときに、「ひとりだとすごく寂しいけれども、ホテルだとたくさん人がいて、ケアしていただけるのがすごく好き」って仰っていましたよね。

小山:そう、それもあります。マンションにひとりっていうのは寂しいけど、ホテルにはいろんな人がいるからいいんですよね。


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