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- Hioki-city, Kagoshima

盛永省治さんの工房「Crate」を訪ねて

街中から少しはずれた街道沿いにぽつんと建つ工房Crate。白がベースのすっきりとした店内には、ナラ、桜、オーク、ホウなどさまざまな木材で作られたボウルや皿たちが、それぞれの木肌の色や木目の違いがお互いを引き立て合いながら、整然と並でいる。手にとると、しっとりと、まだ命を持った木のぬくもりが伝わってくる。

写真上:構築的なフォルムのウッドボウルたち。ぬめっとしたマットな光沢がある木肌が美しい。 下左:すっきりとしたディスプレイの店内。チェストなどの家具も盛永さんの作。 下右:シンプルな平皿を手にとって感触を確かめる長尾さん。

長尾さんとの出会いと
作品の変化

「ランドスケープの中原さんから、盛永さんの作品を紹介していただいたのが3年ほど前です。完成度の高い造形的なフォルムながら、木の暖かさを存分に生かした、魅力ある作品だと思っていました。今日、久しぶりに工房を訪ねてみると、使い勝手を重視したシンプルな形の器が増え、わ、いいなって改めて感じましたよ」と長尾さん。
「ありがとうございます。これは、私が毎日家で使っている皿。カレーを盛ってもぜんぜん大丈夫。毎日使うことは大切ですね。削ぎ落としていくことでたどり着いた、こんな感じの器が、今、好きなんです」と答える。

上左:木材は丸太の状態で買い付ける。 上右:旋盤を回して、ミノを当て、少しずつ木地を削っていく。 下左:フォルムが出来上がったら、サンドペーパーで丁寧に磨いていく。 下右:木肌を磨き終わった無垢の状態。このあとに塗装をして仕上げる。

工房を見学して

ショップを拝見したあとは、隣接する工房の見学。買い付けた木材が無造作に積まれ、作りかけのウッドボールが足元に転がっている。成形、圧搾、研磨など、さまざまな工程のための見慣れない工具がたくさん並んでいる。手にとったボウルは、作りかけのホウの木のもの。丸太の状態から切り出してアウトラインを決め、ここまで成形するのに、午前中いっぱいかかるのだという。せっかくならと、おねだりして続きを見せてもらった。モーターが唸り声をあげて旋盤が回り始める。木地に沿わせるように刃をあてると、見る間に木肌が削れて形がつけられていくのがわかる。
「なにしろ木は出会いものです。生き物ですから。よい木と巡り合えなければ納得のいく作品はできません。逆に、出会えたなら、色や肌合い、木目など、木の持つ個性を生かしていくのが私の仕事なんです。縁あって今年の夏、彫刻家のアルマ・レマンの手伝いをしに、LAの東に位置するヨシュア・ツリーというところに、2ヶ月ほど行くことになりました。どんな生活になるかはわかりませんが、いろいろな刺激を受けることは間違いありません。わくわくしています」と盛永さん。帰国後の作品の変化が今から楽しみだ。

profile   information

盛永 省治●1976年生まれ。職業能力開発総合大学にて工業デザインや彫刻を学び、卒業後木造の大工を2年ほど経験。その後、鹿児島のFACTORY1202にて7年ほど家具製作に従事。2007年、工房兼店舗「Crate」をオープン。この7月からLA近郊 Joshua Tree にて、彫刻家アルマ・アレンの元で研修を積む。

Crate
鹿児島県日置市東市来長里2558-3
tel 099-274-4300
塩ゆでしたそら豆にオリーブオイルをかけて。
かるかんと高麗餅、煎粉餅とかからんだんごをそれぞれ盛り、あくまきにはきなこと砂糖をたっぷり。

城戸雄介さんの個展に足を運んで

上:器を手にとり、和やかに談笑する城戸さんと長尾さん。 2段目:松田さん作の鉄の台の上にドリッパーとマグカップを並べて展示。 下左:ドリッパーは、もち手の長さと、穴の大きさが使い勝手の決め手。 下右:一つずつ、調合が異なる釉薬をかけて焼き上げたオーバルの器。

ONE KILNの城戸雄介とRoam松田創意の2人展

Crateで見かけた素敵なキャニスター。シンプルなポットに盛永さんの木のふたを組み合わせている。聞けば、陶器は鹿児島出身の陶芸家・城戸雄介氏の作だとか。ちょうど家具作家松田創意氏との「磁器と木と鉄の2人展」を、市内のギャラリー兼カフェスポット「グッドネイバーズ」で開催中とのこと。さっそく覗きに出かけた。会場には、古い木材と鉄を組み合わせて作ったテーブルやチェストの上に、城戸さんの器と色とりどりのコーヒードリッパーやマグカップがリズミカルに置かれ、ポップな空間を創り上げている。実は二人は義理の従兄弟同士。どおりで波長がぴたりと合うわけだ。

実験的精神の中から生まれた器たち

ドリッパーは、今回の個展のテーマの一つ。1Fのカフェでは、実際にこのドリッパーを使って香り高いコーヒーを淹れて好評だそう。また、定番のオーバルの皿に、今回の新しい試みとして、鉄分の含有量を少しずつ変えた釉薬をかけ分けて焼き上げ、それを連続的に並べて見せている。金属的な青い光を宿しているものや、ゴールドに近い輝きを持つもの、マットな質感の生地……、一つ一つの変化の具合を眺めるのは楽しい。
「味のある楕円と、リムの部分のキレのある立ち上がりがいい具合ですね。真鍮などの金属を思わせる釉薬も面白い」と長尾さん。
「ええ、金属だと思うお客様も多くて、よく聞かれるんですよ。素材はなんですかって」と城戸さん。
ドリッパーも、試行錯誤を繰り返し、デザインと機能性の折り合いを模索した結果、行き着いた形がこれなのだという。そんな実験的な探究心が城戸さんの魅力なのかもしれない。これから注目の、若手の一人だ。

profile   information

城戸 雄介●1980年生まれ、桑沢デザイン研究所卒業。デザイン事務所、有田焼窯元などを経て、2008年ONE KILNを設立。東京では、プレイマウンテンやOPTRICO、鹿児島ではGOOD NEIGHBORsやD&DEPARTMENTに作品がおかれている。また、個展やCOW BOOKSのオリジナルカップの製作など精力的に活動。

城戸雄介 ONE KILN
鹿児島県鹿児島市明和1-13-9
tel 090-9580-3663
onekiln.com
profile   information

松田 創意●長野、大分、佐賀で木工と鉄工を学ぶ。2010年にRoamを設立。

松田創意 Roam
鹿児島県鹿児島市谷山港1-3-16
tel 099-296-1675
断面のオレンジ色がきれいな、蒸し安納いも。

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