松橋窯で釉薬の妙と繊細な土肌を堪能する

- Uki-city, Kumamoto

松橋窯の魅力に触れる

「小学校の校舎みたいな建物を」と窯主・長木實さんがリクエストして、大工さんと一緒に作った、ひなびた味わいのある工房が、母屋から離れた緑の中にぽつんと建つ。小屋の周りには、ゆるゆると幸せな空気が流れ、窓辺に置かれた一輪挿しに無造作に活けられた花の美しさが、端的にその魅力を表している。中へ入り、暗さに目がなれ、順にぐるりと見回せば、洗練された形状と繊細な肌合い持つ器に目を奪われる。

長木さんは県の小代焼の職人として、35年間黙々と、1日400~500個もろくろをひき続けてきたが、個性や完成度の高さを求められる仕事をしたいと、松橋窯を築窯。14年前に退職し、松橋窯での作家活動に専念した。完成度の高いフォルムは、職工時代に身体で覚えた技術の賜物だ。その上に青釉、白釉、黄釉をかけ流し、ダークな風合いから、明るい色味まで、思い通りに発色させる。さらに、石を混ぜ込んで、土肌にざっくりとした荒々しい風合いを織り込むなど、独自の工夫が生きている。

上:青小代、黄小代の色合いの違いがよく出た美しい皿。 下:内田鋼一作の膳の上に置かれた小ぶりの湯呑み。
 
上左:窓の木枠が小学校の校舎を彷彿とさせる素朴でのどかな建物。 上中:品格のある酒器を一輪挿しに。 下中:長木さんの説明を熱心に聞く長尾さん。 下右:庭に積み上げられた薪がわりの潅木。
上左:リムの幅がゆったりと広いフォルムがモダンな浅鉢。 上右:汁つぎにいい、黄小代のスリムな片口。 下左:天草の陶石を使用した白物の平皿に夏みかんを盛りつけて。 下右:最近熱心に取り組んでいる白物の数々。小皿、小鉢、一輪挿しなど愛らしい器が並ぶ。

松橋窯の成り立ちと
長尾さんの惹かれた器

「これ、いいですねえ」と、長尾さんが手にとった器は、砕いた石の風合いがぷつぷつと生地に残っている。もう一つ、何度も手にとっては戻しと、慈しんだのが、この片口。こちらも石を混ぜ込んだざっくりとした風合いがいい。悩んだ末に、結局2つとも購入。ご満悦だ。

「磁器の風合いのある器を指して、こちらは?」と聞くと、
「最近、白い器も作り始めたんですよ」との答え。

「わ、素敵、もっと見せてください」とせがむ長尾さん。

天草の陶石に、小代焼の釉薬をかけて焼いたものだと、長木さんが説明する。だからか、土の鉄分が黒や茶色に反応しているものもあり、肌合いがざらっとして、通常の白磁に比べて味がある。「白ものだけで、茶道具を作りたいって思っています」という長木さんの言葉に、すごくいいと思うと、長尾さんも目を輝かせる。

「伝統の製法を確かに受け継いだ上で、今の時代の暮らしや卓上を鮮やかに彩ってくれる。それが松橋蒲窯のなによりの魅力なのだと思います」と長尾さん。

上:高台皿に盛った素朴な郷土菓子でお茶の時間に。ポット型の急須が美しい。 下左:愛らしい煎茶セット。美しい刺し子の布巾を添えて。 下右:熊本の銘菓・古今伝授の間香梅「加勢以多」(tel 096-381-8008)の品のいい表情が、土肌の美しい器と好相性を見せる。

ほっこりお茶で和む

ひとしきりお話を伺ったあとに、奥様が、工房の真ん中に置かれた丸テーブルでお茶を淹れてくださった。そここに置かれた内田鋼一作の鉄の膳や古い家具も奥様の好みだとか。上質な暮らしぶりが伺える。さて、長尾さんが買っておいた、地元の銘菓・フジバンビのドーナッツのプレーンと黒糖を、大小の高台皿に盛りつけた。素朴で愛らしい郷土菓子の美しさと、器の生地の質感が見事に呼応し、ひとつの世界観を作り上げている。香り高い焙じ茶でいただけば、なんとも心和むひとときだ。そばに置かれた刺し子に目をとめ、「素敵ですね」と、長尾さんが聞けば、「90歳を過ぎたおばあちゃんの作品なんです。誰よりも元気な方で」と、楽しい話を聞かせてくれる。もっと話しを伺いたいと、名残惜しい気持ちのなか、松橋窯をあとにした。

砕いた石を混ぜ込んだ、ざっくりした風合いの黄小代の皿。

盛りつけ後を見る

松橋窯

熊本県宇城市松橋町松橋661-1

tel & fax 0964-33-3168


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