古小代の雄大さが生き続けるふもと窯

- Arao-city, Kumamoto

上:昭和50年代に築窯された勇壮な六袋の登窯。 下左:井上泰秋さんの説明を熱心に聞く長尾さん。 下右:窯から出したばかりの器がさやごと、うず高く積まれている。

歴史と自然に磨かれた
ふもと窯

次に向かったのが「ふもと窯」だ。当主の井上泰秋さんは、熊本国際民藝館の館長も務め、昭和から現在まで、小代焼を盛りたてるべく尽力してきた中心人物だ。広大な敷地の裏手には、昭和50年代に築いた六袋の登り窯がゆったりと構える。隣接する工房に案内してもらうと、あちらこちらでちりんちりんという音が心地良く耳に響く。聞けば、今朝、窯出ししたばかりなのだと言う。焼き上がった生地が収縮するときに、貫入が入る音なのだ。

「昭和32年から焼き物を始めました。気づけば54年の月日が流れています」と井上さん。「その間、この地で、先人からの小代焼を真実の形で継承するということに、とことんこだわってきました。だから土はすべて地元のもの。釉薬に使う薪も敷地内のもの、藁も近隣の農家で分けてもらいます」。そんな井上さんの言葉通り、窯の近くの納屋には、藁が積み上げられている。動力のなかった時代に、小川の流れを利用して藁灰を搗く唐臼(からうす)もいまだに現役だ。そんなふもと窯の魅力は、一言で言うならば、豊かな自然の恵みを存分に取り込みながら、確かな技術に裏付けられた作陶といえるだろうか。

上左:母屋の2階には古小代の器が並ぶ。力強い古小代の酒器。藁灰の白が晴れやかに浮き上がる。 上中:古小代の中でも白小代の色味がよく出た茶碗。 上右:数十年に渡る井上さんの作品がずらりと並ぶ。天皇皇后両陛下が来熊訪された折、特別注文を賜り制作した、その兄弟皿も展示されている。 下左:富士山の図柄を独自の技法(蒔釉掛け)で焼き込んだ大皿。 下右:花器や大皿など、力強さと品格を併せ持つ井上泰秋さんの作品の数々。

古小代の魅力を受け継ぐ井上さんの作品

母屋に戻り、2階の古小代のコレクションを見せてもらった。「古いものはどうしてこんなに風情があるのでしょう」と、長尾さんが感心すれば、
「昔のもののよさは、何より、作る人も使う人もおおらかだったということ。傷を景色といい、石がはぜたものに石はぜと名づけたくらいですから」と井上さんが返す。凛と野武士的な力強さを湛えながらも、土の温もりが伝わる古小代は、見飽きることがない。

そして、古小代にまじって、井上さんの作品も堂々とした姿を見せる。その魅力はなんといっても、自由奔放な釉薬の掛け流しにある。色の取り合わせやコントラストを楽しむ抽象的なものから、富士山やひらめなどの具象まで、思いのまま。そうした瞬発力は、もちろんのことながら熟練の技の賜物だ。いっちん、象嵌、刷毛目、とびかんななど、多くの技法を自在に操る、引き出しの多さや、奔放に見えて緻密な計算に基づいた釉薬の配合などが積み重なってこのことにほかなならい。

上左:定番の角皿も、1枚1枚違う紋様から、好みのものを見つけるのが楽しみ。 上右:フリーカップとして多様に使えるそばちょこ。 下左:たっぷりとした美しい水差しの数々。 下左:使いやすい小ぶりのオーバルの取り皿。

2代目 尚之さんの
スリップウェア

息子の尚之さんは、小石原の太田哲三氏のもとで修業を積み、現在は、イギリスに端を発するスリップウエアを中心に作陶を続ける。センスと確かな技術は親譲りながら、独自の道を切り拓いている。実は、長尾さんは尚之さんのスリップウエアは、以前に、福岡の工藝FUKOで購入して、気にいって使っている。窯出しされた多くの作品を見て、改めて、その確かな感性に一目おいた。

しかしながら尚之さんは、窯出しした無数の器と対峙しながら、「色が沈んでる、立ち上がりが悪い…」などさかんにつぶやいている。
「思った通りには上がらないものですか?」と聞けば、
「思い通りにならないことが陶芸の奥の深さであり、楽しさなんです」と、頼もしい。こうした若手の力が、明日の小代焼を支えていくのであろう。

重厚感のある小代焼の生地に、蒔釉掛けで雪原を跳ねるうさぎを描いた絵皿。

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奥が2代目の尚之さん作のスリップウェア。手前が泰秋さんのシンプルな青小代の浅鉢。

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ふもと窯

熊本県荒尾市府本字古畑1728-1

tel  0968-68-0456
fax 0968-68-4487


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