西海[少量手作りの良心的な明太子]

- Kitakyushu-city, Fukuoka

福岡といえば、なにをおいても明太子。空港にも、一体何社の明太子が並んでいることか。好物を聞くと、明太子と答える人も、驚くほど多い。もちろんトモさんも、ごたぶんにもれず。九州うまいもの探検隊としては、最高の明太子を探し、その作り方を見せてもらわねば。けれど、博多っ子も、博多通も、皆それぞれに、贔屓のメーカーがあり、どこを訪ねたらよいのか、決め手に欠ける。そこで、北九州で広く、食品の卸業を営む井筒屋商事の荒瀬社長に、「少量を丁寧にきちんと作っているところを」というリクエストを出したところ、良心的な明太子造りでは太鼓判と、「西海」を紹介してくれた。

アメリカ産のスケソウダラを使用するわけ

工場につくと、笑顔で迎えてくれた土居 修社長が、案内してくれた先は、会議室。まずは、世界地図を前にしての講義だ。明太子の原料は? の問いに「は~い、スケソウダラの卵巣」と元気に答えるトモさん。が、産地は? となると「うーん、北の海?」と心もとない。土居さんは、ポインターで、北米の海を指す。「西海」では、あえてアメリカ産のスケソウダラの卵巣を使用しているのだという。国産のほうが上というイメージがあるが、こと、明太子に関しては、一概にそうとはいえない。アメリカ産のものは、獲れた船上ですぐに腹からを出して冷凍するから、胆汁がまわらず、くさみがでない。北海道沖の羅臼産のものなどは、陸に水揚げしてからの解体で、どうしても独特のくせが出てしまうのだという。それをコクという見方もできるが、西海の目指す「あっさり、すっきり、品よく」には、北米産がぴったりなのだ。
「ところで、なぜ明太子というのか知ってますか?」と土居さん。もちろん、知るよしもなく、一同、興味津々。「実は、スケソウダラのことを、韓国では明太魚(ミョンテ)というのです」。なーるほど。発祥は、明治時代に、当時、韓国に住んでいた日本人が浜に捨てられていたスケソウダラの卵巣を、塩と唐辛子で漬けたのが起源だとする説が有力。戦後、日本へ持ち帰り、「ふくや」で作られ始めた。

加工の現場を拝見

解凍した状態の原卵。大きさも形もバラバラ。
「わあ、これは大きい。極上の明太子になりそう!」

—— 原料となる原卵とは?

さて、講義はこの辺りで終了し、加工の現場を見学。スケソウダラの原卵は、産卵までの間に、ガム子→真子→目付け→水子という順に大きくなっていく。一般的に明太子は真子を利用することが多いが、「西海」では、真子から目付けにいたる途中の段階にこだわっているのだとか。この時期の原卵は、「西海」が大切にするプチプチとした食感があり、卵本来の旨みが濃厚だから。しかし、この時期の卵巣は、皮が薄く、実に扱いづらい。そこを一腹一腹丁寧に漬けていくのが、腕の見せどころだ。

漬け込みの前に、塩水で洗い、黒い皮や異物などを取り除き、丁寧に掃除をする。この下処理の工程をヒゲ取りという。

—— 解凍から一次漬け込みまで

船上で取り出した真子は即座に冷凍され、福岡まで運ばれる。だから、工房での作業は、カチカチに凍った真子を解凍することから始まる。蒸気による揮発熱を利用して解凍するミスト解凍機の中で、一昼夜かけて解凍。その後、皮が破れないように優しく水洗い。そしてヒゲ取り(黒い皮や異物を取り除く作業)をする。
土居さん曰く、「知る限りでは、一次漬け込みの前に、ヒゲ取りをしているメーカーはありません。漬け込んでいる途中で破れてバラコになる確率が高くなるけれど、二次加工のスピードと安全性が上がりますから」。

ヒゲ取りをして、きれいになった原卵を樽に詰め、一次漬け込み用の、塩ベースの調味液を注ぐ。
バケツ型の樽を2つ合わせて輪転機にセットし、むらなく調味液が浸透するように、ゆっくり回転させながら漬け込む。

—— 調味液による一次漬け込み

バケツ型の樽にヒゲ取りした真子を並べ入れ、調味液を注いで輪転機にセットする。この輪転機は一定時間で1/4ずつ回転し、むらなく味がしみこむ仕掛けになっている。調味液は、アミノ酸などの調味料、天然塩、着色する場合は着色料を混ぜ、加水したもの。但し、塩の量も加水の量も、回転させる時間の間隔も一定ではなく、たらこの状態に応じて決めていくのだそう。なにより、職人の経験に基づく勘と度胸が必要とされる。
「何で見極めるんですか?」とトモさん
「原料を洗っている最中に柔らかいか、ハリがあるかなどを確認して決めるんですよ。
失敗したら500kg以上も台無しになってしまうわけですから、こわいですよね」と土居さん。
こうしてゆっくりと回転させながら18時間ほど漬け込む。これで一次漬け込み完了だ。
このときに、調味液を上手に吸い込んでうまくふくらむかどうかが、最大のポイントだという。

大きさで選別してバットに並べ入れ、二次漬け込み用の辛い調味液をひたひたに注ぐ。
ニ次漬け込みの段階で破損がひどかったものは、中身を出して、おにぎり用のペーストにする。

—— ニ次漬け込み

輪転機からおろして、軽く水洗いしてざるに並べ、大きさに応じて選別する。この段階で破れているものは切れ子になり、さらに破れがひどい場合は、中身を取り出しておにぎりの具のバラ子などにする。
サイズごとにバットに並べたら、昆布エキスや鰹エキスを使った濃いめのだしに粉唐辛子を加えた辛い調味液をひたひたに注ぐ。そしてラップでぐるぐる巻に密閉し、外気を遮断してチルドルームで最短でも2日間じっくり浸け込む。これが二次漬け込みだ。

粒を際立たせるために、余分な調味液を落とす「しぼり」の工程。
二次漬け込み、しぼりの工程、ともにチルドルームでじっくり熟成させる。
仕上がった明太子は、きれいに並べて箱詰め。

—— しぼりから仕上げまで

さて、西海の目指す品のいい辛味を充分に含んだら、穴の開いたコンテナに並べ、チルドルームで一昼夜以上ねかせる。すると余分なたれが落ち、粒子感(つぶつぶ感)が際立ってくる。完成した明太子は箱詰めされ、マイナス20度の巨大な冷凍室で、鮮度抜群のまま冷凍される。
「うわ、ブルブルブル、我慢大会にも寒すぎる~~」と案内された冷凍室は早々に退散。

試食用の明太子が、お皿に山盛り。食欲をそそる。
「なるほど、口の中でぷちぷちと粒が弾けます。美味しい!」

いよいよ試食

ひと通りの見学が終わったら、待ちに待った試食ターイム。一口大に切り分けられた明太子がお皿に山盛り。
「あー、コンビニでごはんを買ってくればよかった!」と後悔するも、一口で「ん?? プチプチ~!」。「で、しょ!」と土居さん。
「一粒一粒の卵が口の中で弾けるのがわかります。私の好きなプチプチ感は原卵の選び方と漬け込みの違いからくるものだったんですね」とトモさんも納得の様子だ。
「あっさりとしているから、パスタやソースなどにも応用が効くし、使いやすそうですね。明太子好きとしてはたまりません。ちょっと多めに、あ、バラコも! う~ん、また買いすぎちゃった」と、嘆くトモさんなのでした。

 

渾身のレシピに乞ご期待!

明太子

     
↓   ↓  
   

じゃがいものガレット
明太子ソース

 

明太子とつるむらさきの白和え

 

From Producer
土居 修さん

「明太子が日本で作られるようになって、たかだか、50年。なのに、これほどまでも日本人をとりこにしてやまないのは、ときに無性に食べたくなる、くせになる味だからでしょう。各社、しのぎを削るなかで、うちが大切にしているのは、あっさりした品のいい辛味と、粒を感じる食感です。最後に水気をしぼることで際立つぷちぷち感。実は、これで目方が減って、儲けも減ってしまうのですが(笑)、うちにとってはそれが命。漬け込む調味液も、日々、試行錯誤。進化を続けています」

Profile
愛媛の漁村出身で、いりこなどの海産物を加工していた先々代が、昭和4年におこした「西海」に、後継者として32歳で入社。精密機械の技術者からの転身だが、それだけに、フラットな目で、目指す明太子の方向性を見据えられたと言う。美味しい明太子作りに励むと同時に、明太子のある楽しい食卓作りを目指して、日々、努力を続ける。

Tomo's Comment
「空港に並んでいる明太子を見ると買わずにはいられない、それくらい、明太子好きなんです。料理屋さんのメニューにあっても、つい頼んじゃう。だから、明太子作りのプロセスを知ることができて、すごく楽しかったです。今までは、なんとなく、このメーカーも、あのメーカーのもおいしいな、って思っていましたが、なぜ、自分がこれを美味しいと感じるのかという、好みも明確に分かった気がしました。西海さんのプチプチ感大好きです」

西海

福岡県北九州市小倉北区西港町94-16

tel 093-592-2626

fax 093-592-4789
www.nishikai.co.jp


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