南里商店[博多が誇る食文化 "おきうと"]

- Fukuoka-city, Fukuoka

くるりとまるめたおきうとをパックに並べた状態。
万能ねぎとしょうがをたっぷり添えて、ポン酢をかけて、いただきまーす。

おきうとって何?

「おきうと」なんともいえない、この不思議な響き。これを知っていたら、相当の博多通とみて間違いない。寒天とこんにゃくの中間のような、とらえどころのない、けれど、くせになる食材だ。なぜゆえトモさんは、この希少なローカルフードを知っていたのだろうか。
「実は、父が九州に住んでいた時期がありまして、その頃の思い出なのか、頻繁に買ってきて自宅で楽しんでいたんです。つるつるっと喉を滑り、さっぱりとみずみずしい。味といえるような味があるわけではないのだけれど、ひんやりとした喉ごしのよさがやみつきになるんですよ」。
え? 結局おきうとって何なの? 説明を聞いてもさっぱり見当がつかない我々スタッフに、おきうとづくり一筋、76年の「南里商店」の女将・南里文子さんは「まずは、食べてみんしゃい」と1cm幅に切ったおきうとに、万能ねぎの小口切りとしょうがのみじん切りをたっぷりのせ、ポン酢をかけて食べさせてくれた。
「わっ、ひんやり、つるんとしておいしい」と皆、驚きの声を上げる。
「でしょう!この薬味とポン酢との相性も抜群」とトモさんも得意顔だ。果たして、この "つるり" の正体を見極めんと、厨房へ向かった。

おきうとの原料となるえご。色も質感もさまざま。
個体差が大きいので、そのつど、加える水の量も、煮る時間も加減しないと、一定の製品に仕上がらない。おきうと作りは、長年の経験が必要とされる作業だと、南里さんは説明する。

おきうとの正体とは?

おきうとの歴史は200数十年前の博多に遡る。当時、未曾有の大飢饉に襲われ、博多全体が失意のどん底にあった中で、勇気ある漁師が博多湾に飛び込み、群生していた海藻(えご)を煮詰め、飢えで苦しむ人達に配ったとか。この漁師の勇気と機転をたたえて、煮詰めた海藻を沖人(おきうと)、もしくは、人々を救ったことから救人(おきうと)と呼ぶようになったのだという。以来、おきうとは、博多の朝食の膳には欠かせないものとして根付いていく。豆腐やしじみのように、朝、おきうとを売り歩く子供の様子が、江戸時代の博多の文化を綴った本に描かれている。
「不思議な言葉だと思っていましたが、そんな意味があったんですね!」と感慨深げなトモさん。要するに、おきうとの原料は、博多湾に繁茂していた「えご」という海藻のみ。これを煮詰めて固めただけという実にシンプルな食べ物なのだ。そして、200年以上たった今も、その製法が変わらず受け継がれているのだから素晴らしい。

まず、原料となるえごを水に浸し、ゆっくり戻す。
大きな釜で、もどしたえごにさらに水を加え、とろとろに溶けるまで煮る。
煮えたえごを充填機に移す。
充填機で、えごを小判形に搾り出しているところを、興味深く見つめるトモさん。
きれいに小判形に搾り出されたおきうと。このまま冷やし固める。
冷えて固まったおきうとを1枚ずつはがし、バットに移す。
1枚ずつ手作業で、おきうとをくるりと丸め、パックに詰めていく。

おきうと作りを拝見

さっそく工房へ。まず、乾燥したえごを、一昼夜水に浸けてもどし、大鍋で2時間ほど、完全にとろとろになるまで煮る。それを小判形の型に流して冷やし、固まったら、手作業でくるりと巻いてパックに詰めていく。作業はこれにて終了と、実にシンプル。どこにも手の加えようがない、正真正銘、完全無添加の自然食品。「くるんと丸まったこの形が独特で、なんとも愛せます」とトモさんは目を細める。

江戸時代には、朝、おきうと売りが、威勢のいい掛け声とともにおきうとを売り歩いたとか。その様子が描かれている
おきうと売りの子供を陶器で象った博多人形。
おきうとの入った桶を大八車に積み込んでいる図。

博多の食文化を守る

「なにしろ、えごを煮て固めるだけの、本当にシンプルな食べ物ですから、原料となる素材の味、色、風味がストレートに製品に影響します。だから、素材には、絶対に妥協できないんです」と南里さん。
しかし、時代とともに、えご漁が長引く不況に陥り、多くのおきうと製造業者は、てん草などを原材料に混ぜることを余儀なくされた。ところが、「南里商店」だけは、えご100%にこだわり続けて今に至る。現在は新潟、石川、青森県など、日本海側でとれるえごを取り寄せて使用している。それこそが3代にわたり、のれんと博多の食文化を守り続ける南里商店のこだわりだ。
「私も、毎朝食べたいな」と、とりあえず20パック購入。「だって、東京では買えないんだもん。万能ねぎと生姜の薬味の組み合わせも最高に気に入りました。早速試してみます!」

 

渾身のレシピに乞ご期待!

おきうと

     
↓   ↓  
   

せん切り野菜のおきうとサラダ

 

おきうとの黒蜜がけ

 

From Producer
南里 文子さん

「九州の方じゃないのに、おきうとをご存知とは、誇らしいですねえ。きっと印象的だったんでしょうね、お父さんのお土産が。今は、宅急便の発達で、博多を出て暮らしている人たちにも、懐かしい郷土の味を届けることができます。博多を思い出しながら食べてもらえるのは嬉しいことです。地元で、今までと変わらず作り続けていくと同時に、こうして全国に知ってもらうことで、博多独自の食文化を守っていきたいと思っています」

Profile
博多出身。3代目の南里正孝さんと結婚以来、南里商店を切り盛りしている。現在は、4代目に、伝統の製法を指導。

Tomo's Comment
「何年ぶりかな、おきうと食べたの。やっぱり私、おきうとが好きなんだと思って、感激しちゃいました。福岡の食材探訪の中でもすごく楽しみにしたものの一つです。おきうとって何でできているんだろうという、長年の疑問も、今日、解けました。これ、最強のダイエット食ですよね。常備したいなあ。いや、博多に住んじゃおうかな」

南里商店

福岡県福岡市中央区郡の津4-4-22

tel 092-737-2627

fax 092-737-2628
www.okiuto.com


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