選んだ器、そして盛りつけ

- serving fish, serving food

道の駅や産直店で購入したおやつ。かりんとう、砂糖がけの大豆としょうがをざっくり盛っても絵になる。
同じ器に、料理を盛り付けると…… 奥はズッキーニと菜の花のおひたしに、ローストしたアーモンドを散らしたもの。左は、帆立、ラディッシュ、チコリのサラダ。帆立の甘みにラディッシュのほろ苦味と歯ごたえが心地いい。手前がアスパラガスとスナップえんどうのサラダ。春の味の取り合わせ。
三温糖とレモンでマリネしたいちごを甘酒に浮かべて洒落たデザートに。
カマンベールチーズに香ばしい白ごまをたっぷりふって。一方は、サラミ、生ハム、チョリソー、スモークレバーなどの盛り合わせ。ちょっとしたつまみなどを盛るのに最適。
カリッとトーストしたパンに、ひよこ豆、オリーブ油、ごまを合わせたフムス風のペーストを添えて。
アイスクリームにくるみとはちみつでコンポートにした干し柿を添えて。

白磁の里は理想の故郷

波佐見という地名は、どこか爽やかで風通しのいいイメージがある。語源を調べると、元は「峽(はざま)」と書き、「はざまのうみ」が転じて波佐見となったらしい。山合いなのに「波」とつく軽やかさが印象的だった。実際、南は大村湾、東は有明海、西は遠くに五島灘と、海に囲まれていることを考えたら、不思議でないかもしれない。それにしても、波佐見と字をあてたとは、何とも洒落た感覚だろうか。
私は何故か地名が気になる。植物と関係すれば、文字のどこかに「草」があるし、「田」に「水」、「野」、「木」、「葉」などなど、気候風土や地形に関わる地名は多い。その中でも、波佐見は私にとって、ダントツに印象深い地名なのだ。
初めて訪ねたのは、もうずいぶん前のことで、その時も、ちょうど仕事でやり取りのあった堀江さんに案内していただいた。初回は夏。鬱蒼とした木々の奥で、水遊びにはしゃぐ子供達の楽しそうな様子が羨ましくて、そうだ、夏休みってこううだったんだ、と、正しい夏休みの姿を久々に見た気がした。
実は、私的日本百景の上位に位置する場所が、波佐見の隣町、嬉野温泉に一歩入ったところにある。小高い丘の上にお茶の古樹があり、その周辺の景色は、まさに理想の故郷、という感じで、いつまでも心に残っている。そして、波佐見町のちょうど真ん中あたりの美しい鬼木の棚田。無邪気な夏休みを過ごすのに相応しい、豊かな条件が揃っている。

春先の今回、堀江さんに再会して、懐かしい気分で波佐見をまわった。波佐見=くらわんか椀のイメージがあって、智恵治窯跡で堀江さんが拾い上げて見せてくれたお茶碗は、その代表のようなものだった。偶然、少し後に訪ねた京都の骨董市で、まるで同じものが売られていたのにびっくり。割れのないものなど、そう多くは残っていないだろうから、たいそうな値段がついていても仕方ないのかな、とも思う。偶然きれいな形で残った、のんびりした柄のくらわんか椀は、誰かの目に留まって買われていっただろうか。くらわんか椀は、江戸時代の食を支えた道具のひとつだ。親しみやすい器があれば、それがきっかけになって食べ方が変わったり豊かになったりするのだから、お茶碗ひとつでも侮れない存在だ。このお茶碗は庶民の食生活に大いに影響を与えたことだろう。同時に、長く残って昔を語る美しいものが、今の時代にどれだけあるのだろう?とふと思った。
後世に善いもの、美しいものとして伝わるに違いないのは、中村平三さんの器だ。中村さんがろくろを回す作業場の反対側では、整った蛸唐草の絵付けをする奥様の仕事場があり、今ではいい職人が減っているというろくろ仕事と絵付けの名人が一緒にいる。このご夫婦、出来すぎていると思うほど。それにしてもお二人の仕事は、曖昧さがまるでなく頼もしい。何か、小さな鉢ひとつでも使ってみたら、日々のお惣菜も美しく盛りつけようという気持ちが働くに違いないだろう。
波佐見は、作陶する人には心地よい土地だろうと思う。というのは、中村平三窯のようなベテランが土台を支える一方で、新しい試みも数多く行われているからだ。堀江さんと光春窯の馬場さん、そして一真陶苑の真崎さんの仕事を見ると、それがよくわかる。
波佐見焼は、シャープでいて日常に役立つ白磁、というところだと思うが、その特長が生かされているのが、現在の様々な商品なのではないだろうか。
波を遠くに見る、緑豊かな山合いの里で作られ、街に送り出される数々のモダンな器を想像すると、やっぱりここは理想の故郷に違いない、と思うのだ。

あとがき

二度目の波佐見の旅も、堀江さんの案内で充実した楽しい時間だった。昔の窯跡に立つと、いかにストレートな人の力によって器を生み出されていたのかが想像できる。どんな人がどんな思いで形を作り、絵付けをしていたのだろうか。柄ゆきの楽しさに、素朴で単純で豊かな食を想像すると、それは今の暮しのお手本になる気がしてくる。


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